高市早苗首相の「存立危機事態」発言から1カ月余りが経過した。この間、中国の報復措置は、日本への渡航自粛、中国での日本人イベントの中止、日本産水産物の輸入停止といった経済的なレベルから、自衛隊機に対するレーダー照射に続き、核兵器搭載可能な爆撃機による威嚇飛行など軍事力を行使するレベルにまで引き上げられている。対日威圧をエスカレートさせる常軌を逸した中国の狙いを分析する。
決して非を認めない中国
「極めて遺憾であり、中国には強く抗議し、再発防止を厳重に申し入れました」――。小泉進次郎防衛相は12月7日、午前2時過ぎという異例の緊急記者会見を、語気を強めて締めくくった。
沖縄本島南方の宮古海峡を抜けた空母「遼寧」を中心とする中国艦隊は6日午後、針路を北転させ、沖縄本島と沖大東島間に広がる海域で艦載機J-15の発着艦を開始した。そこは日本の防空識別圏(ADIZ)の内側であり、直ちに航空自衛隊のF-15戦闘機がスクランブル発進した。ただし、訓練場所が日本の領土、領空に接近しているとはいえ、ここまでは中国の空母艦載機の発着艦訓練では何度も繰り返されてきた状況である。
だが今回、中国のJ-15戦闘機は、約80キロも離れた空域で警戒監視する空自機に対し、2度にわたってレーダーを照射し、2回目は18時37分から約30分間も断続的に照射を繰り返したという。自衛隊機は即座に空自・那覇基地と連絡を取り、照射された際に発する警報音を録音するとともに、パイロットの前方画面に映るJ-15からの照射情報を録画するなど証拠を保全し、同基地に帰投した。
こうした明白な証拠を確認した上で小泉防衛相は緊急会見を実施したのだが、中国側は「自衛隊機が訓練エリアに進入し、接近を繰り返した」と反論。このため小泉防衛相は自身のXを通じて、空母「遼寧」の艦載機訓練について、訓練を行う時間や場所の緯度・経度を示すノータム(NOTAM=航空情報)はなく、船舶等に対する航行警報も事前に通報されていなかったなどと発信した。
この発信に対し中国は9日、訓練開始前の中国軍と自衛隊による無線のやり取りだとする音声をSNS上で公開、事前に訓練を通告していたとし、中国外務省は「日本が意図的にデマを流したことが証明された」と反論した。
ここまでがレーダー照射を巡る確執だが、日本に対し中国は決して非を認めず、謝罪しない国だということを、私たちは改めて認識しなければならない。
