2025年12月18日(木)

21世紀の安全保障論

2025年12月18日

 理由の二番目は、中国は高市首相発言を、米ペロシ下院議長(当時)の訪台と同じように、相手が種を蒔いたと捉える可能性があるということだ。

 2022年8月、中国政府の意向を聞き入れずに米下院議長のペロシ氏が台湾を訪問したが、中国はすぐさま反発し、台湾海峡や台湾周辺海空域での軍事行動を活発化させている。それ以降、軍事演習は常態化し、中国軍機が台湾領空を侵犯するケースも頻発している。

 中国にすれば「問題の発端は米国と台湾がつくった」という理屈が成り立つ。同様に今回のケースも「発端は高市首相の台湾発言」と言い続けることが可能だろう。

 そして三番目の理由は、中国の軍事的な対日威圧に対し、トランプ大統領が沈黙し続けているように、日米間に温度差があることだ。中国はやり過ぎて米国を怒らせたくはないはずだが、今は米国が反応しないことで、日本周辺の軍事訓練を通じて、台湾に対しても心理的な圧力を加えることができていると考えているだろう。今後はどこまでやれば米国が反応するかを見定め続けるに違いない。

日本が執るべき戦略

 すでに高市首相の発言以降、沖縄・尖閣諸島の周辺海域では、軍艦並みの76ミリ砲を備えた重武装の中国海警船が接続水域や領海内への侵入を繰り返すなど、挑発行為のボルテージを一段アップさせている。また、レーダー照射事案の最中にも中国海軍のフリゲート艦が、自衛隊の基地建設が進む鹿児島・馬毛島をかすめるように九州南端の大隅海峡を行き来するなど活動常態化の兆しが見え始めている。

 政府はこうした活動はもとより、今後は中国が日本周辺海空域で行う活動のすべてを国内外に発信し、軍事圧力の非道ぶりを、冷静かつ毅然とした態度で告発し続ける必要がある。常態化に慣れてしまうことだけは絶対に避けなければならない。

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