2025年7月13日(日)

プーチンのロシア

2025年6月27日

大量の兵器損失

 兵器の喪失も深刻な問題となっている。調査によれば、ロシア軍は侵攻開始以降、すでに3000両を超える戦車を失ったとされるが、これは戦争開始時に常備兵力としてロシア軍が保有された戦車台数を上回るとされる。

 他の兵器も大量に損失しており、ロシア国内では軍事産業の稼働率を大幅に引き上げたり、当局が民間企業に対して軍事利用できる部品供給を命じるなどで対応している。財政への負担も深刻で、25年の連邦予算は実に4割が軍事・治安維持関連の支出になる見通しだ。

 ただ、このような戦時経済体制がどこまで維持できるかは不透明だ。欧米の経済制裁により、兵器の部品調達が困難なロシアは、損失分をソ連時代などの旧式兵器で補っている。

 労働力不足も深刻で、軍事工場の稼働率の向上には限界がある。民間企業が生産している製品を部品などに代替利用するケースもあるというが、そのようなものは、やはり効率が劣るという。

砲撃数でウクライナが近接か

 このような中、ウクライナ軍からは圧倒的に自軍を上回っていたロシア軍の攻撃規模との差が、徐々に縮小しているとの証言が出ている。米議会の報告書は、ウクライナ軍幹部の証言として、かつては10倍ほどの差があったロシア軍との砲撃の回数の差が、現在は最大まで2倍程度の差にまで縮まっているとの発言を紹介している。事実であれば、ロシア軍の攻撃能力は、戦争開始当時と比べ大幅に下落している可能性がある。

 このような状況をロシア軍が単独で押し返すのは容易ではない。今後の情勢を左右するのは、友好国との関係にあるとみられる。すでに地上軍兵力でロシアを支援する北朝鮮のほか、事実上の経済支援を展開する中国、またドローンを供給するイランなどとの関係が、今後のロシア軍の戦闘継続能力の行方を大きく左右するとみられる。

 現在の攻勢は、損害規模や、相手国の民間人の犠牲などを度外視しながらウクライナ側を追い詰めようとするロシア側の戦略の一端だといえる。しかし、軍事力の甚大な消耗は、ロシア軍にとり、何よりの脅威となっていることは確実だ。そのような状況からの脱却を他国に頼らなくてはならない事態を招いたことは、プーチン大統領にとり大きな誤算であったと言わざるをえない。

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