2025年12月6日(土)

教養としての中東情勢

2025年7月10日

 その上、タリバンは女性抑圧政策で国際社会から非難を受け、一段と孤立した。国際刑事裁判所(ICC)は7月8日、アクンザダ師らタリバンの指導者2人に逮捕状まで出した。

“リチウムのサウジアラビア”

 こうした中、タリバンはイメージ改善に向けて動き、水面下でロシアと中国に対する外交工作を活発化させた。狙いは両国との外交関係樹立だった。

タリバンが両国にカードとして提示したのがレアアース開発だった。アフガンはレアアースの中でもリチウムの埋蔵量が「世界最大級」と推定され、米国の資源調査会社から“リチウムのサウジアラビア”とまで形容された。

 リチウムはレアアースの中でも、電気自動車、スマートフォン、AIなどに使用される極めて重要な資源だ。20年後にはその需要は今の40倍にも膨らむと観測されている。

レアアースについては現在、中国が埋蔵量で約50%のシェアを占めているが、アフガンは「地球上でもっとも鉱物資源に恵まれた地」(地質専門家)といわれるように、将来的に中国と並ぶような可能性を秘める。

 同国の地下資源については60年代、ソ連の地質学者がヒンズークシ山脈にリチウムが眠っていることを発表。米軍が01年にアフガンへ侵攻した後、米地質調査所が軍の協力を得て調査し、「1兆ドル」にも達するレアアースが北東部のクナール、ヌリスタン両州を中心に存在していることを確認した。

 米軍の撤退後、ゴールドラッシュのようなレアアースの争奪戦が起きつつある中、先行したのは中国だった。中国は埋蔵量、採掘量、精製量ともトップの地位を占める。トランプ米政権による高関税の脅しにも屈せず、堂々と渡り合っているが、その裏には「レアアースを掌握している」との自信がある。

 だが、将来を見据えると、中国が発展するためにはアフガンのレアアースは不可欠で、中国高官や企業経営者によるタリバン詣ではひっきりなしだ。タリバンの大使を北京に受け入れており、外交関係樹立も時間の問題とみられていた。そこに中国を押さえてタリバン承認に動いたのがロシアのプーチン政権だった。


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