その後も中国の嫌がらせは続き、25年5月、沖縄・尖閣諸島の領海に侵入した中国海警局の船が搭載ヘリを発進させる意図的な領空侵犯事案を引き起こしている。ところが、この事態に政府内からは、領空侵犯に対する厳しい中国批判ではなく、日本の民間機が尖閣周辺を飛行したから中国が領空侵犯したのだ、といった意見が聞こえてきた。
この構図は今回の高市発言と同じで、「日本が先に原因を作ったから中国が反応した」という中国の対日威圧を正当化することにしかならない。中国は日本政府の対応や日本国内の世論動向をみながら、対日威圧を仕掛け、常態化させていることは明らかだろう。ではどう対応すればいいのか。
国際秩序の破壊者には同志国との連携が重要
ひとつのヒントは、対日威圧と同じ時期に中国が繰り返していた国際秩序やルールへの破壊行為を直視することだ。24年10月、中国は台湾を取り囲むように「聯合利剣2024B」と称する軍事演習を実施したが、演習海空域の緯度経度は示さず、民間船舶に対する航行警報も発出しなかった。翌25年2月には中国海軍の駆逐艦など3隻が事前に何の通告もなく、豪州とニュージーランドの間にあるタスマン海で実弾射撃訓練を実施したのに続き、ベトナム沖のトンキン湾と台湾の南西海域でも無通告で実弾射撃を行っている。
国連海洋法条約は、公海では航行や調査など様々な自由を認めているが、公海上で各国の海軍が演習を行う際には、沿岸国など関係国に「妥当な配慮」を払わなければならないと規定している。砲やミサイルなどの実弾射撃を、事前に周辺国に通告せずに実施することなど論外と言っていい。
実際、タスマン海の演習では、演習の影響で多くの民間航空機が飛行ルートを変更せざるを得なかった。まさに秩序とルールを破壊した暴挙と言っていい。
この事態に豪州とニュージーランドの両国政府は、中国に懸念を表明したが、対日威圧が繰り返されていた時期と重なっており、政府は豪州などと連携し、一連の日本への威圧を含めて海洋秩序を破壊する中国を厳しく非難することができたはずだ。それが国際社会に対する世論戦だ。
官邸幹部による核保有発言も同じ
報道によると、官邸幹部が昨年12月、記者との懇談というオフレコ取材の場で、米国の核抑止の信頼性に言及し、「日本は核兵器を保有すべきだと思っている」との私見を述べたという。ところがオフレコの発言が記事化され、一部メディアや野党は発言を問題視し、中国は官邸幹部の発言を非難し、軍国主義の復活などと日本を糾弾している。まさに中国の世論戦に利用されてしまったと言っていいだろう。
