そもそも中国とロシア、北朝鮮という核兵器を保有する独裁国家と対峙する日本で、オフレコでしか核兵器を抑止する議論ができないこと自体が問題だが、議論するタイミングがあるのも確かだろう。
例えば、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は毎年、各国が保有する核弾頭数の推計を発表しており、中国については「核弾頭の保有数がどの国よりも速いペースで増加している」と指摘している。核兵器不拡散条約(NPT)加盟国の中で、中国だけが核弾頭を増やしており、米国防総省の「中国の軍事力に関する年次報告書」では、中国は35年までに核弾頭数を1500発にまで増やすと想定されている。
核廃絶を希求する日本にとって言語道断だが、政府はこうした発表がある度に、中国の核戦力増強を非難する世論戦を仕掛ける必要がある。もちろん中国は反発する。だが、多くの国々は中国の身勝手な主張を認識し、嫌悪するだろう。と同時に、こうした機会の度に日本の核抑止について議論すれば、核抑止の必要性に対する国民の理解も深まるはずだ。
世論戦は多国間協調の重要なツール
なぜ日本は今、こうした世論戦を強化する必要があるのか。それは昨年末、第2次トランプ政権が、米国が世界秩序を支えてきた時代の終焉を宣言する国家安全保障戦略を公表するなど、トランプ大統領の対中姿勢の軟化が明らかだからだ。
昨年10月の米中首脳会談の前後には、トランプ大統領は中国との関係を「G2=Group of Two」と呼び、米国と中国が世界の大国として協力しながら国際的な主要課題に取り組む姿勢までのぞかせている。
日本や欧州の米同盟国を軽視する危険なシグナルであり、高市政権は必要以上の米中接近に楔を打つとともに、さまざまな情報を発信して、価値観を共有する同志国およびアジアの国々とのネットワークを構築しなければならない。
具体的には、中国が南シナ海と東シナ海、そして台湾海峡で何をやっているのか、といったことなど軍事力や経済力でインド太平洋の秩序やルールを破壊する中国の実像を伝え続けることによって、この地域の安定が米国の利益になることを米政権に再認識させる必要がある。
今年は米中トップ同士の相互訪問を含め、春秋2回の米中首脳会談が予定されている。だからこそ高市政権は、同志国間の連携を深めるとともに、大国間の横暴を許さない世論戦戦略を構築する必要がある。
