トランプ米政権が昨年末に公表した「国家安全保障戦略」で、欧州の同盟国は酷評され、さらにデンマーク自治領グリーンランドの領有問題を巡って米政権への不信感を募らせている欧州の国々は、中国に再接近し、対中関係の改善に動いている。
英首相もこの流れで訪中したわけで、今後もこの流れが続くことが予想される。であるならば政府は、中国を念頭に、経済安全保障やインド太平洋の安定を議題にしながら、各国政府に対し、訪中する機会があれば、その直後に隣国の日本を訪れる日程を組み入れてもらえるような老練な手立てを駆使してもいいだろう。
米中接近への備え
高市首相は昨年11月、南アフリカで開かれた主要20カ国・地域の首脳会議(G20サミット)で「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向け、G20のメンバーと行動していく」と発言している。これを実践する手段こそ、高市首相が師と仰ぐ安倍元首相の「地球儀を俯瞰する外交」ではないだろうか。
トランプ大統領は4月に中国を訪れて習主席と首脳会談に臨む予定で、今秋には習主席が訪米する見通しだ。予想される米中接近に備えるためにも、日本は欧州各国をはじめ東南アジア諸国連合(ASEAN)、豪州、インド、そしてグローバル・サウスの国々と対話し、新たな信頼関係を築く必要がある。
重要鉱物などのサプライチェーンの強靭化や海底ケーブルの安全確保、食料や経済安全保障に加えサイバー分野での情報共有など議論すべきアジェンダはいくらでもある。そうした国々との関係を密にすることが、結果として、米国にとって日本の価値を高めることにつながるはずだ。南北アメリカ大陸を中心とする「西半球」を重視する方針を打ち出している米国を、東アジア、そしてインド太平洋につなぎ留めておく手立てにもなるだろう。
衆院選の投開票日直前の5日、トランプ大統領はSNSに投稿し、「高市首相を米大統領として全面的に支持する」と表明した。昨秋の訪日にも触れ、「首相に極めて良い印象を持った」と高く評価している。
選挙結果に影響を与えかねないだけに不適切との批判は免れないが、「3月19日にワシントンで日米首脳会談を開く」とも投稿しており、高市首相にとっては初訪米となる。
4月のトランプ大統領の訪中を前に、日米の首脳が対中政策を擦り合わせる絶好の機会となるだろう。と同時に、在任中に80カ国と地域を訪問し、積極的な首脳外交を展開した安倍元首相の「地球儀を俯瞰する外交」を引き継ぐ意思を伝え、米国の明確な支持を取り付けておくことが大切だ。世界に対し日米同盟の強さを示すことになると確信する。
