2026年3月10日(火)

21世紀の安全保障論

2026年3月9日

米中接近に布石を打ち始めた中国

 イラン攻撃後、ホワイトハウスで演説したトランプ氏は「ミサイルと核兵器を装備したイラン政権は、中東のみならず、米国にとっても耐えがたい脅威になる」と述べ、攻撃を正当化した。しかし、ベネズエラに続くトランプ氏のイラン攻撃を目の当たりにすれば、誰も彼の言葉に納得することはできないだろう。ルールに基づく国際秩序の重要性を訴えてきた日本にとって、大国が力任せに他国に現状変更を迫ることなど許されないからだ。

 だが、ここに日米同盟を基軸とする日本の立場の難しさがある。高市首相はベネズエラの時と同じく、今回も国際法上の評価には言及していない。

 批判もあるが、いま優先すべきは何か――。高市氏は19日に予定するトランプ氏との首脳会談で「率直に話をする」と言っており、その機会を最大限活かせるように準備してもらいたい。

 なぜなら、戦争の出口が見えず、トランプ氏への批判が国内外から高まってくるにつれ、トランプ氏が欲するのは、自らへの支持と協力になると思われるからだ。ここに米中が急接近する可能性がある。すでに中国は4日、全国人民代表大会(全人代)の開幕前の会見で、イラン情勢についてトランプ政権を名指しで批判することを避けた代わりに、悪化している日中関係を持ち出し、対日圧力をかけ続ける姿勢を強調している。

 しかも、中国はイラン攻撃直後の政府見解として、王毅外相が「主権国家の指導者を公然と殺害し、政権交代を扇動することは容認できない」と発言している。

 不自然に「主権国家の指導者」を強調した表現であり、この言葉から推察できることは、「台湾のトップは主権国家の指導者ではない」ということであり、「中国にとって最も重要な台湾問題は内政問題であり、中国による台湾統一は主権侵害にはあたらない」ということではないだろうか。米国のイラン攻撃に乗じて、中国は台湾問題などの重要課題について布石を打ち始めた気がしてならない。

高市訪米は米中に楔を撃つ最後のチャンス

 4月のトランプ氏の訪中から11月に中国で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)まで、トランプ大統領と中国の習近平国家主席との首脳会談が立て続けに行われることが予定されている。しかも2人は、2月4日に電話会談し、台湾への武器売却の停止や台湾問題の重要性、ベネズエラ産原油の中国への輸出、中国が大豆など米国産農産物を購入することなどを協議し、トランプ氏は「素晴らしい会話だった」と発信している。


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