2026年1月25日(日)

Wedge REPORT

2025年11月14日

 同社は1990年代から2000年代にかけて、安価な中国製ガラスの台頭により収益性が低下し、ガラス製品への長年の集中が経営上の懸念事項となっていた。島村社長は、実績あるガラス製品の優位性の活用に依存し続けるのではなく、新市場向けの新素材を受け入れ、新たな利益を生み出すべきだと考え、会社の自己認識を「ガラス」から「素材」へと再定義するよう努めた。

 改革は、伝統的なガラス製造という核となる強み(活用)を維持しつつ、その技術をモビリティ、エレクトロニクス、ライフサイエンスといった高収益な新領域(探索)に展開するという、「両利きの経営」の好例だが、その道中で、長年の実績を持つトップガラスメーカーという認識を社員だけでなく多様なステークホルダーも巻き込んで変えてゆく必要があった。新たな成長分野として定義したこれらの戦略的事業の営業利益を、グループ全体の少なくとも40%に持っていくというストレッチ目標(重要業績評価指標:KPI)を社内外に共有し支えてもらったのだ。

何を学ぶべきか

 最後に、日本版の第9章で日本のリーダー向けに追加した提言の一つをお伝えする。リゾリュート・リーダーにとって継続的な学習力(Learning Capability)はますます重要性を増す。

 この学習力には2種類ある。一つは知識・経験の学習で、もう一つは価値観・考え方や行動におけるアップデートである。

 知識・経験面では、経営戦略、マーケテイング、財務・会計、組織論、国際経営等の基本的な経営知識に加え、経営者がアップデートして学ぶべき知識に異文化マネジメント、地政学、哲学、芸術も含まれてきており、その対象は広がりつつある。リゾリュート・リーダーは最新の経営知見のみでなく、古典も学ぶことで、一時的ではない本質的な考え方を獲得する必要がある。

 もう一つの価値観・考え方の変化を学ぶことは、これからのリーダーにとって極めて重要となる。地政学等のマクロな価値観、ビジネスの価値観、社会的な価値観等、様々な切り口で変化が進んでおり、新たな知識を仕入れても、価値観のアップデートが伴わないと適切な意思決定や行動につながらない。

 こうしたリーダーはまだ少数派である。多くの企業では依然として旧態依然の文化が根強く、変革は容易ではない。しかし、確実に“新しい芽”は生まれている。それを一定数の海外投資家は静かに見抜き、評価している。

 日経平均5万円突破の裏側には、この「リーダーの質の変化」も存在する。こうしたリーダーと経営が拡張することが今後の日本経済の「本物の成長力」となる。

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