日本の企業経営の根深い課題と対応策
高度成長期には日本のコンセンサス重視な経営スタイルは競争力の源泉の一つと言われていたが、どのような有効な手法も過剰になると副作用が生じ、コンセンサス過剰が意思決定の遅れにもつながった。また、自社の強み(いわゆるコアコンピタンス)に立脚して戦略を構築するのは定石であるが、コアコンピタンスへの過剰依存が時に挑戦を阻み業績の低迷につながる事例も散見されるようになった。
日本の伝統的大企業の多くが、事業が成長し組織が複雑になった中で組織劣化した背景として下記の3つが挙げられる(『組織の<重さ>日本的企業組織の再点検』沼上幹、2007年)。
① 長年の蓄積がある組織はつぶれないという安定感の元で、自分では何もしないが他者の企画を批評し責任を取らない人、自分が意思決定すべき問題を部下に押し付けるフリーライダーの増加
② 経済合理性から離れた内向きの合意形成と過剰な「和」志向
③経営層の経営リテラシー不足。優れた戦略の区別がつかず、適切な意思決定のできないマネジメント層の増加
逆に言えば、①フリーライダーから当事者意識を持った自発性への転換、②過剰な和とコンセンサス志向からの脱却、③経営リテラシーを持ったマネジメント層が必要となる。
「リゾリュート・ジャパン(RJ)モデル」のリーダーたちは上記のような課題にうまく対応していた。その主な特徴をまとめると下記のようになる。
① 伝統的な経営手法と革新的な経営課題の融合
② トップ層における決断力と人間力を併せ持ったリーダーシップ能力の強化
③ 取締役会のスタンスをハンズオフな傍観型から能動的パートナー型へと転換
④ 人材管理における年功序列から能力開発重視へのシフト
⑤ 長年培われたモデルのプロセス規律と新たなビジネスモデルを統合することによる、事業開発とポートフォリオの変革
「毅然と決断する日本型リーダー」の再定義
本稿ではリーダーシップにフォーカスしよう。新しいリーダーたちは、単に「強い意思」を示すだけのトップダウン型ではない。現場やミドル層の声を丁寧に聴きながらも、最後はビジョンに基づいてリスクを取り、責任を引き受ける。
コンセンサスに流されず、「正しいことを毅然と行う」リーダーシップである。日本の伝統的な精神を底流にもちつつ、和魂洋才・和魂漢才で世界の知恵を柔軟に吸収し、現場感を伴って難しい決断を下す〝リゾリュート〟なリーダーなのである。
好例の一つが中外製薬である。2000年ごろには製薬業界内で8位前後だった同社は25年10月には、時価総額11兆円を超え、武田薬品工業や第一三共を抜いて日本最大の製薬企業となっている。
成長の背景には、中外製薬名誉会長の永山治氏(当時社長)が業界の未来を長期的に見据えた視点と毅然とした決断があった。日本企業では極めて珍しい決断として、中外製薬は02年にスイスの医療大手エフ・ホフマン・ラ・ロシュと資本提携し、ロシュが中外製薬の過半数株式を取得するという道を選んだ。
当時の中外製薬は業績好調であり、経営難による提携ではなく、〝繁栄期の外資との提携〟であった。中外製薬の社名、上場、独立性を維持することで両社は合意した。こうして、営業面や開発面でロシュとのシナジーを活かせるだけでなく、独自の意思決定による経営を続けることが可能となった。
