韓国や台湾では、市中返金と空港返金を併用しながら、不正防止と利便性のバランスを取っており、日本もこの方向に学ぶ価値がある。
具体的には、①空港処理レーンの拡充とオンライン申請による手続き簡素化、②中小免税店向けシステム接続補助、③AIを活用した不正検知とKPI(否認率・待ち時間・苦情率)による監査、④混雑エリアから地方への返金拠点分散、などが政策パッケージとして想定される。これにより、不正・利便・データ活用の三つを同時に達成できる。
国内世論の受容し「透明で、稼げる」制度へ
免税制度を廃止すれば、短期的な税収増は得られても、観光・流通・地域経済の総収益は減少する可能性が高い。逆に、制度を信頼性の高い形で進化させれば、観光を持続的な外貨獲得産業として位置づけ直すことができる。
観光は日本の数少ない「輸出型産業」であり、免税制度はそのインフラの一部である。課題は「制度があるかないか」ではなく、「どう設計するか」に移っている。
一方で、「日本人は10%払うのに、外国人だけ免税」という税の水平的公平性への懸念も無視できない。消費税は社会保障財源として位置づけられ、生活必需品を含め国民が広く負担している。
このため、免税制度のあり方は、経済合理性だけでなく国内世論の受容性(感情論)も前提とした設計でなければ持続しない。これから求められるのは、国際基準の厳格さと日本的なサービス品質を両立し、国内外双方にとって納得度の高い制度である。
