2025年4月18日(金)

Wedge OPINION

2025年4月15日

 世界は、鳩山氏が胡錦濤・中国国家主席の隣に立ち、東アジア共同体の創設構想を表明する様子を目撃した。それは米国を含まない共同体構想であり、首相の意図は米国側に伝えられていなかった。そんなやり取りがあった後、我々は一体、中国側が日米同盟の状態についてどんなメッセージを読み取ったと考えるべきなのか。世界はまた、小沢一郎氏が600人もの随行員を引き連れ、中国共産党の指導部に表敬訪問した北京詣でを目撃した。これは中国の自尊心を満足させるものであり、共産党指導部を喜ばせたのは間違いあるまい。中国国民の心には、中華帝国全盛期の光景が浮かんだはずだ。

 続いて我々は2010年4月、中国海軍の艦艇10隻が宮古海峡を通過するのを目にした。それも初めてのことではなかった。

 3月には中国海軍がそれより小規模な小型艦艇部隊を日本の近海に派出している。艦隊編成も興味深いもので、キロ級潜水艦(ロシアが開発した通常動力、静粛性を高めた艦)2隻と少なくとも2隻のロシア製ソブレメンヌイ級駆逐艦(艦齢は最も古いもので10年強と比較的新鋭。満載排水量約8000トン。イージス、ステルス能力はないが対空、対艦兵装は強力で、制海権確保の主役と目される)が含まれていた。

 こうした中国軍の艦隊行動は、中国が言うところの「第一列島線」を超えた初の大規模演習だった。これら展開の背後には、北京の長期的・野心的計画があるのであって思いつきによるものではない。中国自身の国防白書を読みさえすれば納得がいくだろう。

 また、中国海軍の艦載ヘリコプターが海上自衛隊の艦艇に近づき、護衛艦「すずなみ」からわずか90メートルの至近距離まで接近したという報告もあった。そればかりか中国海軍は今、海上保安庁の測量船「昭洋」に国際水域から出ていくよう命じて、日本にさらなる屈辱を与えている。

中国政府の無責任な
行動を見過ごすな

 一方、過去数カ月間、国際社会は中国に対し、貿易や支援を中国に依存する不埒な国家による無謀な行動を阻止し、核拡散を抑制するために、その影響力を駆使して事態に介入するよう要請してきた。しかし、中国政府は要請に応えず、目先の国益ばかりを重視する近視眼的な対応を取ってきた。イラン政府を説得し、核兵器の追求をやめさせるための強力な制裁体制は一向に実現に近づいていない。また、言語道断なことに、北朝鮮が韓国海軍の哨戒艦を魚雷で攻撃し、46人の乗組員の命を奪った挑発行為の後でさえ、金正日総書記が中国政府から与えられたのは、支持を確約する言葉だけだった。

 米国と同じように、日本は建設的な対中関係を望んでおり、また、それを必要としている。だが、我々が弱さを見せたり、自分たちの価値観を放棄したりすれば、中国との意味ある協調は実現しない。

 中国政府の無責任な行動をただ見過ごすことは、中国から感謝の念を引き出すものでなければ、相互の善意のゼスチャーに発展するものでもない。反対に、中国の指導者たちはささやかな抵抗に遭うまで、どんどん勝手な振る舞いを続けるだけだ。

2010年4月10日、浮上航行中の中国海軍のキロ級潜水艦を捉えた瞬間。挑発行為はエスカレートするばかりだ(朝雲新聞=PANA)

 私はここで、いわゆる中国の「台頭」について、不要に不安をかき立てるつもりはない。明らかに、中国は今も、都市部と農村部の貧富の格差や労働争議、環境劣化、民族紛争といった大きな内政問題に苦しめられている国だ。


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