2025年3月27日(木)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2025年2月19日

米中貿易戦争の複雑な状況を解決するための視点

バッテリーサミットに出席した筆者

 現在の米中貿易戦争の背景を整理すると、米国側の主張と戦略は多岐にわたる。経済的側面では、貿易赤字の是正や中国の知的財産権侵害への対応、米国製造業の保護が挙げられる。

 政治的側面では、対中強硬策として関税引き上げや企業制裁が行われており、インド太平洋戦略の推進も重要なポイントである。

 軍事的側面においては、台湾問題や南シナ海での軍事的圧力、半導体やAI技術の規制が進められている。

 一方、中国側の主張と戦略も注目に値する。

 経済的側面では、自国製造業の強化を目指す「中国製造2025」や一帯一路の拡張、外貨準備の活用が進められている。

 政治的には、習近平体制の強化やBRICS、ASEANとの関係強化が図られている。

 軍事的には、台湾問題への対処や米国の技術封鎖への対応として自前技術の開発が進められている。

 米中だけでなく、他国の視点も取り入れる必要がある。米国の他国との貿易問題では、カナダやメキシコへの影響があり、USMCA(米加墨貿易協定)における調整が求められる。また、対EU関税の可能性や、日本と韓国における米国製半導体規制の影響も見逃せない。

 中国の他国との貿易関係においては、東南アジア(ASEAN)とのFTAや一帯一路プロジェクトの進展が重要な要素である。インドとの貿易摩擦も続いており、インドの立場にも影響を与える。また、米中対立の中での中国とロシアの関係の変化も注視すべきである。

 このような複雑な状況の中で、米中貿易戦争の行方について現実的なシナリオを考えることが求められる。シナリオの一つとして、貿易交渉の再開と部分的妥協が挙げられる。トランプ再選後、新たな貿易協定が締結される可能性があるが、中国の産業政策は変わらず、長期的な対立が続くことが予想される。

 別のシナリオとして、中国の対抗策強化とブロック経済化が考えられる。中国がASEANやロシア、中東諸国と経済圏を強化し、米国依存を減らす動きが進む可能性がある。また、米中対立の長期化と世界経済の分断が進行し、「米国中心」と「中国中心」の二つのブロック化に向かうことも考えられよう。

 この内容を通じて、バッテリー戦争の多面的な理解を深め、米中貿易戦争の複雑な状況を解決するための視点を提供することが求められている。今後の展開を予測し、より良い議論を促進するための基盤を築くことが重要である。

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