2024年12月12日(木)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2022年10月16日

 スタートアップワールドカップとは、70以上の国と地域で予選が開催され、世界のスタートアップエコシステムの構築と起業家精神の育成を目的として設立された世界最大級のピッチコンテストである。その世界決勝戦が、サンフランシスコのマリオット・マーキスホテルにて開催された。

 簡単に言うと起業家のオリンピックだと思えば良い。2017年に第1回コンテストが開催されて以来今年で第4回コンテストが開かれた。賞金100万ドルを目指して年々人気が出てきたが20年と21年はCovid19のために延期となった。

 今年は3年分をまとめて開いたので500人以上の発表者と5万人以上の世界の参加者、さらに2500以上の投資家、70カ所以上の国と地域からの参加となった。過去の優勝を見ると第1回2017年は日本のユニファ、2018年は米国のLeuco Labs、2019年はベトナムのAbivinが優勝した。

 日本のユニファは保育園向けに提供するIoTサービスで、カメラやセンサー、コミュニケーションロボットなどを使い、離れた場所にいる親が保育園に預けた子供の様子をスマートフォンで見たりできるというユニークな内容だ。米国Leuco Labsはがん患者の白血球レベルを非侵襲でモニタリングする技術を開発した先端技術が評価された。ベトナムのAbivinはAIを活用した物流最適化プラットフォームによって物流コスト削減やサプライチェーン全体の可視化に成功したのが分かりやすかった。

 以上の優勝チームはいずれも投資家が現れ順調に成長している。従って彼らに続けと新たなスタートアップ企業が今年も満を持して参加したのである。

決勝戦には誰が勝ち残ったのか?

 さて、世界から56社の各国代表のスタートアップが集結して最終ファイナリスト10社が世界王者の称号と優勝投資賞金 100万ドル(約1.4億円)をかけて、3000人以上の観客の前で白熱したピッチを行った。

 世界決勝戦に勝ち進んだ10社は以下の通りである。

①Mi Terro(米国)
https://www.miterro.com/

②iLoF(英国)
https://ilof.tech/

③Lazarus 3D(米国)    
https://www.lazarus3d.com/

④Matricelf(イスラエル)    
https://matricelf.com/

⑤SkyDrive(日本)  
https://en.skydrive2020.com/

⑥ANote Music(ルクセンブルグ)
http://www.anotemusic.com

⑦Wonderverse(中国)    
https://moblab.com/

⑧ViiT Health(メキシコ)   
https://viit.health/

⑨srtx(カナダ)         
https://www.srtxlabs.com/

⑩Japa(米国)        
https://www.parkjapa.com/

 結果から言えば、カナダ代表のsrtx社が優勝した。同社は防弾チョッキや登山用具に使用されている繊維と同じ繊維を使用し、破れないストッキングを開発、販売する企業だ。その優れた技術とビジネス・スキームが評価された。

優勝したsrtx社

 準優勝は日本のSkyDrive社(本社:愛知県豊田市、代表取締役CEO:福澤知浩氏)は、世界の並み居る競合を押し退け、準優勝という快挙を成し遂げた。同社は「空飛ぶクルマ」を開発しており映像を会場で披露したので驚きの歓声があがった。

 ジャンルでいうと、医療、アプリ、IP、シェアリングエコノミー、ハード、マッチングプラットフォーム、教育、エネルギー開発など多岐にわたる。 先進国では、高齢化を反映して医療系の会社も多い印象だった。

日本のスタートアップはどうなのか?

 21年度は残念ながら延期となったが、22年度の東京大会ではさらにバージョンアップされた内容となった。22年の日本予選には200社を超えるスタートアップから応募があり、その中で選考を突破した10社がファイナリストとして残った。22年のファイナリスト10社は以下だ。

①ispace
輸送用ランダー(月着陸船)やローバー(月面探査車)を開発し、月面資源開発の事業化に取組む。https://ispace-inc.com/jpn/

②SkyDrive
日本初の公開有人飛行試験に成功した空飛ぶ自動車「AIR MOBILITY」や重量物運搬ドローン「Cargo Drone」を開発。https://skydrive2020.com/

③Terra Motors
EV向けの充電サービス「Terra Charge」を展開。またインドを中心にEVの製造・販売事業を展開。https://terramotors.co.jp/

④HOMMA Group 
建築デザインとAIを活用したテクノロジー技術を開発し、家電と住宅設備をつなぐスマートホーム技術を提供。https://www.hom.ma/

⑤ZENKIGEN
AIを活用して企業のオンライン採用を支援するプラットフォーム「harutaka」を提供。https://zenkigen.co.jp/

⑥ラトナ
AIおよびIoTを用いて、さまざまな業種の生産性向上を支援するプラットフォーム「AION」を提供。https://www.latona.io/

⑦UPBOND
ブロックチェーン技術を活用したマーケティング支援ツール「UPBOND」を提供。https://www.upbond.io/

⑧WizWe
学習や運動の行動習慣化をサポートするためのプラットフォーム「Smart Habit」を提供。https://wizwe.co.jp/

⑨ビードットメディカル
超小型陽子線がん治療装置の開発及び粒子線がん治療に関わるコンサルティングを行う。https://bdotmed.co.jp/

⑩ジョリーグッド
VR・AI技術を活用した医療教育サービスを提供。場所・時間を問わず臨床実習が可能となる。https://jollygood.co.jp/

 ファイナリスト10社も革新的な内容で宇宙航空、EV、建築、AI、IoT、ブロックチェーン、教育、医療と多岐にわたっている。その中でも空飛ぶ飛行機の内容は素晴らしかった。決して世界に引けを取られないものだが、たった一つ不利だと感じたのは謙虚さが前に出てアピール力が不足していることであったとも言えよう。


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