「キルギス」という国を、ご存じだろうか? このほど日本貿易振興会(JETRO)が、キルギスからミッションを受け入れた。10月28日に福岡で、31日には大阪で、11月2日には東京でハイテクセミナーが開催された。
キルギスソフトウェア開発協会HTTP創設者アジス・アバキロフ氏から「キルギスIT産業の魅力とポストアジア」としてのキルギスについて。キルギスソフトウェア開発協会CEOであるアビゲイル・ミナシ氏からは、キルギスソフトウェア開発協会と会員企業紹介。キルギス・ハイテクノロジーパークHTTP代表のチュバク・テミロフ氏からは、キルギス・ハイテクノロジーパークについて。キルギス共和国大統領府政治経済研究局長のアルマズ・イサノフ氏からはキルギスの投資環境について、それぞれ講演があった。
キーワードは、「ポストアジア」そして「IT人材」だ。キルギスと日本の時差はたった3時間しかない。アジアといえば、中韓台、として東南アジア各国を思い浮かべるが、そこは中韓台勢、そして日本企業同士で、人材獲得、市場拡大競争がすさまじい。そこで、「ポストアジア」としてのキルギスに注目してほしいということだ。
そして、「IT人材」である。ITサービス輸出の8割が米国になっているというように、クオリティは担保されているといってよい。横並び意識の強い、日本企業(日本人)だが、今こそファーストペンギンになって、キルギスでのビジネス、協業などを検討してみるべきだ。
キルギスで「ノマド生活」を見つけた
私は、7月に中央アジアを回って遊牧民の生活(ノマド)に興味を持った。キルギスの首都ビシケクから4時間かけて鉱山訪問した際、イシククル湖に宿泊した時のことだ。スイスのような美しいリゾート地で、多くのビジネスパーソンが別荘でリモートワークをしてた。しかも、彼らが所属するのは、欧米企業だ。コロナ禍は、まさにグローバルレベルで働き方を変えていたのだ。
ここでキルギスのことを簡単に紹介しておきたい。人口は650万の小国である。日本の千葉県くらいの規模だ。国土は20万平方メートルで、9割が標高1500メートル以上の山岳国家だ。カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、中国と国境を接するので外からの脅威を常に受けてきたが、幸い山国であるから狭いながら国家を守ることができたのだろう。歴史的には玄奘三蔵がインドへ向かうルートとして有名であったが、東西のシルクロードの要衝というほどのことはなかった。
私がキルギスで印象に残っている点は主に3つある。
①教育水準の高さ
キルギス人の識字率は99%と高く、教育水準が高い。キルギス語とロシア語が母国語であり、語学習得能力が高い。私が知っている人でも、短期間で日本語をマスターしたので、コミニュケーションギャップが少なかった。
②日本人との類似性
顔が日本人と似ている。また、容姿だけではなく性格も大人しくて日本人とは相性がいい。日本文化にも興味を持っているキルギス人が多く、親兄弟を大事にして老人を敬う文化がある。
③ノマド文化
このところ「ノマド(遊牧民文化)」が、日本でも注目されるようになったが、ノマド自体は、キルギスのもともとの国民性である。
「ノマド」というのは、まさにアフター・コロナの時代に相応しい生活スタイルといえるだろう。日本でもハイテク企業の中には特定の事務所で仕事をするよりもコンピューター1台だけを持って田舎でITビジネスを進めるという事例が出ている。
実際、日本の若者でもキルギスに行ってリモートワークをしながら仕事をするケースがあると聞いた。また逆にキルギス人のIT人材が日本で仕事をするケースも徐々に増えているという。
日本のIT分野の人材不足が増えている中でコストパフォーマンスがキルギスはインドに次いで安価なので日本の企業もキルギス人を雇うケースが増えているようだ。インターネット自由度は世界1位の53点(インドは2位の51点)だ。