獣医士官と聞いて、ピンとくる日本人は少ないだろう。だが韓国軍には、軍用犬を診療し、兵士の食事を検査し、防疫を担う「動物の医師」たちが存在する。なぜ彼らがそこまで幅広い任務を担うのか――。
さらに4月28日には、韓国軍が「我が民族の永遠の英雄」と讃える武将・李舜臣の誕生記念式典が執り行われた。文禄・慶長の役の名将は、現代の韓国軍でどう生きているのか。
日本には存在しない「獣医士官」の意外な任務
4月27日付記事で、獣医士官の任官が報じられた。獣医士官は日本人にとって馴染みは薄いだろうが、韓国軍では兵科として確立されている。
獣医兵科は1954年3月7日に創設された。任務は大きく3つで、第一は軍用犬の診療だ。韓国軍は約1300頭の軍用犬を運用しており、その健康管理を獣医士官が担う。第二は食品衛生管理。陸軍補給支援司令部隷下の「食品検査隊」では、部隊に納品される食肉・乳製品・飲料水などを検査し、安全性を担保する。そして、最後の一つは防疫・疫学調査である。
ここで一つ素朴な疑問が浮かぶ。なぜ「人の医師」である軍医ではなく、「動物の医師」である獣医が食品衛生を担うのか――。
実は獣医学は元来、人獣共通感染症や食肉衛生、家畜衛生を中核領域とする。肉や乳製品、卵など動物由来食品の安全性検査は世界的に獣医師の伝統的な専門領域であり、韓国でも農林畜産検疫本部などで獣医師が食肉検査を担当している。軍医(人体医療)とはそもそも畑が違うのだ。
加えて、軍と食品衛生の関係には苦い歴史がある。1898年の米西戦争で米軍は「防腐肉スキャンダル」に見舞われ、変質した牛肉で多くの兵士を失った。
この教訓から米陸軍は獣医による食肉検査体制を整え、後の獣医部隊(1916年創設)の中核任務として確立した。韓国軍はこの米軍モデルをほぼそのまま継承している。

