2026年5月9日(土)

韓国軍機関紙『国防日報』で追う

2026年5月9日

 ただし、米軍と韓国軍では兵科の構造が異なる。米陸軍の獣医部隊は約700人の獣医士官に加え、下士官も食品検査専門兵や動物管理専門兵の独立した特技を持ち、士官と下士官が一体で活動する。一方の韓国軍では、獣医兵科は事実上「士官のみ」で構成される特殊兵科であり、独立した獣医関連の下士官特技は存在しない。

 食品検査隊の現場業務は医務兵科の医務副士官や医務兵が補助し、軍用犬の管理は軍事警察兵科が担う。獣医士官は少数精鋭の専門家として、これらの現場を「監督・指導する立場」に立っている。

韓国軍の精神的支柱「李舜臣」とは

 李舜臣(イ・スンシン、1545~1598年)は、文禄・慶長の役で朝鮮水軍を率い、玉浦・閑山島・鳴梁・露梁などの海戦で日本軍を破った武将である。とりわけ1597年の鳴梁海戦では、わずか13隻で10倍を超える日本水軍を撃退したと伝えられ、最後の決戦となった露梁海戦で銃弾に倒れた。死後、朝廷から「忠武公」の諡(おくりな)が贈られ、現代韓国では「救国の英雄」「聖雄」として国民的崇敬の対象となっている。

 韓国軍、とりわけ海軍は、この忠武公の遺産を組織のアイデンティティに組み込んできた。海軍は1945年の創設時から、「海を通じて国に報いる(海洋報国)」という李舜臣の精神を「創軍精神」として継承すると公言。主力駆逐艦であるKDX-Ⅱ型は艦級そのものが「忠武公李舜臣級」と命名され、1番艦の名も「忠武公李舜臣」だ。武功勲章の最高位も「忠武武功勲章」と呼ばれている。

 また誕生日の4月28日が「忠武公誕辰日」として国家記念日に指定されており、毎年、忠清南道牙山市の顕忠祠で大統領や海軍参謀総長らが参列する記念式典が営まれる。顕忠祠は1706年に建立された李舜臣を祀る祠堂だ。

 精神教育においても、忠武公の存在は欠かせない。海軍は2014年から、李舜臣が一兵卒として従軍した行軍路の学術考証に着手し、士官候補生や将兵の行軍・安保教育コースとして整備を進めてきた。陸軍の沿岸警戒部隊でも、亀甲船の前身である板屋船の模型製作を通じて忠武公の護国精神を学ばせる集中精神戦力教育が実施されている。文禄の役から430年を経てなお、韓国軍にとって李舜臣は歴史上の偉人にとどまらず、現役の精神的支柱であり続けている。

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