2026年4月9日(木)

デジタル時代の経営・安全保障学

2026年4月9日

 ワシントンD.C.で3月18日に行われた米国上院情報特別委員会の公聴会で、トゥルシー・ギャバード国家情報長官は、今年11月に実施される中間選挙に関する外国勢力の脅威を「今のところ何もない」と述べたとロイターが報じている。選挙に対するロシアや中国をはじめとする外国勢力からの世論操作に対する脅威は、ますます大きくなっているとの一般の認識とは大きなズレを感じさせる発言には疑問を感じざるをえない。

(oatawa/gettyimages)

 バイデン前政権時代には、選挙干渉や世論操作などの影響工作に対する取り組みが行われてきが、トランプ政権では、2025年12月に公表された国家安全保障戦略(NSS)の主要課題からは外されている。「言論の自由」が最優先事項とされ、偽情報対策として行われてきた「検閲」が縮小された結果、影響工作に対する監視や分析能力が失われているのが実態とみられる。ちなみにギャバード氏は元軍人で民主党の下院議員としてジョー・バイデンの支持者だったが、22年に民主党を離脱しドナルド・トランプを応援、24年に共和党に入党した人物である。

ロシアのIRAによる影響工作

 選挙に対する外国勢力の影響工作が成功した例として、ロシアが英国に対して行った例を挙げておこう。16年に英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)に対する国民投票の際に、EUの弱体化を狙ったロシアのIRA(インターネット・リサーチ・エイジェンシー)が行った影響工作である。

 IRAとは、サンクトペテルブルクを拠点とする米大統領選や欧州の分断工作を行うロシアの組織(トロール工場)で、数百人規模の従業員が3交代24時間体制で架空のアカウントを運営し、SNS工作や偽情報を拡散させる活動を行っており、プーチン政権に近い関係にあるとされている。

 IRAはEU離脱の世論を形成するため、英国がEUに留まればEUへの拠出金が週3億5000万ポンドに達する(実際には週1億数千ポンド)との誤情報をSNSで拡散させた。その結果、英国民の67%が「3億5000万ポンド」という数字を耳にし、42%がそれを信じた結果EU離脱に至った一因とされている。


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