2026年6月29日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年6月29日

 プーチンは空爆を含む圧倒的な軍事力をもって現地武装勢力を排除し、09年にはチェチェンのほぼ全域を掌握、同地域をロシア連邦に再編入して目的を達成し、「強い大統領」としての名声を確固たるものにした。プーチンにとって、チェチェンが再び紛争の地となることは、ロシア大統領の最重要課題と位置付け達成した戦略的成果が、大きく傷つけられることを意味する。

 第二の意義は、テロ対策だ。チェチェン紛争への対処は、ロシアからの分離独立の阻止と、テロとの戦いという二つの側面をもっていた。カディロフを含めチェチェンのムスリムはもともと比較的穏健なイスラム神秘主義(スーフィズム)の信奉者がほとんどであったが、90年代の中ごろからサウジアラビアなどのイスラム原理主義(サラフィスト)が流入して、「グローバルジハード」および「北カフカスにおけるイスラム国家の樹立」を目指す過激なジハード主義が力をつけてきた。

 02年のモスクワ劇場占拠事件、04年のベスラン学校占拠事件はいずれも、これらサラフィスト勢力による犯行である。06年から13年まで反乱軍を率いたドク・ウマロフも同様だ。彼らはカディロフ派と激しく対立し、プーチンはこのようなチェチェン内部の対立を見据えてカディロフ派を支援し、テロ活動を鎮圧することに成功した。

プーチンにとって受け入れがたい失敗

 ポスト・カディロフのチェチェンが再び不安定化することは、プーチンが「テロとの戦い」にも結局勝利できなかったことを意味する。

 ロシアがウクライナ戦争で勝利できないことは「領土拡大」の失敗であるが、チェチェン分離主義の再来は、ロシアの「領土保全」の失敗であり、プーチンにとっては、ウクライナの何倍も受け入れがたいものとなるだろう。

 プーチンはポスト・カディロフのチェチェンをコントロール下におくための対策を、ウクライナ戦争、深刻さを増す経済と危機的な財政状況、国民の不満の高まり、益々不利になりつつある国際環境、といった幾つもの悪条件の中で進めていくことになる。プーチンはまさに「潜在的に爆発的な問題」に直面している。

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