ウクライナ独自の長距離ドローンによる戦果
ウクライナは、射程が1000キロメートル(km)を超えるような自爆ドローンの開発・量産を続けており、ロシア本土に向けて大量のドローンを発射し防空網を突破する「飽和攻撃」を実施している。欧米から供与されたミサイルであれば、ロシア本土への攻撃に制限を課されがちであったのに対し、自国産であればそのような制約もない。
英エコノミストは6月9日、ウクライナによるロシア深部(国境から100km以上離れた遠隔地)へのドローン攻撃計1289件を、紛争や抗議活動に関するデータを収集、分析、地図化する国際監視機関Armed Conflict Location and Event Data project(ACLED)の情報にもとづいて集計・分析した結果を発表した。ロシアにある戦略重要施設(ロケット・火砲発射基地、ドローン生産拠点、その他の軍需工場、空港・航空管制、石油・ガス施設、電力施設)6351カ所をモニターし、2377カ所でウクライナのドローンが至近距離(5km以内)に着弾したとの分析結果を得た。
ゼレンスキー大統領は20日のビデオ演説で、ウクライナの長距離ドローンが国境から2000kmも離れたシベリアのチュメニ州にある石油精製施設を攻撃したと明らかにした。ロシアの歴史を振り返れば、沿ヴォルガ地域の諸都市こそ第二次世界大戦中にドイツ軍の空襲を受けたことがあるものの、ウラルやシベリアはほぼ安全圏だった。ところが、従来は完全な「後方」と見なされてきた地域までが、現在はウクライナによる攻撃対象になっており、「ロシアには絶対安全な後方がある」という数百年にわたる神話が崩れつつある。
ロシア石油部門のダメージ
前出の英エコノミスト・レポートによると、ウクライナの攻撃を受けたロシアの製油所では、修復が間に合わなかったり、修復費用がかさんだりといった深刻な問題が起きている。ロシアの金融・財政に詳しいクレイグ・ケネディ氏は、ここに来てロシア石油会社への銀行貸付が増えており、これはドローン攻撃が大きなコストを課していることを裏付けていると指摘している。
しかも、ウクライナ軍は、単に原油を処理する一次設備ではなく、ガソリンやディーゼルなどの高付加価値製品へと仕上げる高度な「二次精製設備」を重点的に攻撃するようになっており、一層修理費がかさむという。
プーチン体制に批判的なエネルギー専門家として知られているミハイル・クルチヒン氏が、6月16日に配信されたインタビュー記事で、ウクライナの攻撃によるロシアの石油精製能力の低下は、全体の15~20%程度とみられると指摘している。
クルチヒン氏によると、ウクライナによる攻撃の効果が大きくなった原因は、攻撃回数の増加と、命中精度の向上である。従来は貯蔵タンクへの攻撃が中心だったが、現在は交換に数カ月から数年かかる精製設備、中国製部品を調達しなければならない装置などが狙われるようになった。一部設備の復旧には2年を要する可能性もあり、打撃は非常に大きい。その上でクルチヒン氏は、現状は「本格的危機の入口」であり、根本的な解決策は戦争の停止以外にないと指摘する。
