2026年7月18日(土)

World Energy Watch

2026年7月17日

ガソリンスタンド国家がガソリンを輸入

 天然ガスと原油のパイプラインでロシアと結ばれていた欧州諸国は、ロシアのウクライナ侵攻前には天然ガスと石油供給量のそれぞれ約4割、2割強をロシアに依存していた。

 ウクライナ侵攻が、欧州、米国、日本などの対ロシア制裁を引き起こし、欧州諸国は、一部の例外を除きロシアからの石油、石炭の輸入を禁止した。依存度が高かった天然ガスの禁輸は難しく、ロシアからのパイプライン経由と液化天然ガスの輸入は、数量は落ちたものの依然継続している。

 欧米日向け化石燃料の輸出量が減少したロシアは、制裁を課していない中国、インド向けに輸出量を大きく増やした。

 制裁のため国際価格と比べ2、3割安くなったロシア産原油を購入したインドは、自国の製油所でガソリンなどの石油製品に精製し、欧州などに輸出した。中東、アフリカの産油国の一部も安いロシア産原油を購入し石油製品に形を変え欧州向けに輸出した。

 結局、欧州諸国は原油から石油製品に形を変えただけで、ロシア産石油の購入を続けている。そんな中で、6月にインドからの石油製品の輸出先にロシアが加わったと報道された。

 正式発表はないが、ロシアの国営石油会社ロスネフチが49%の権益を持つインドの石油会社ナラヤエナジーの製油所から、6万トンあるいは7万トンのガソリンがロシア向けに出荷された。

 当初の仕向け地は中東のフジャイラ港とされたが、素通りしスエズ運河を通過しロシアに向かった。

 ロシアの原油を精製し、ロシアに輸出する不思議な取引が成立するのは、ロシアの多くの製油所がウクライナの攻撃を受け稼働できなくなっているからだ。

 ウクライナでの戦争は、世界の石油市場に影響を及ぼしていたが、今までとは異なる影響が出始めた。ロシア国民に不安を与え戦争の行方も左右する出来事だ。

最大4割の能力を失ったロシア製油所

 ウクライナは、今年1月と3月にロシアの石油輸出基地のインフラをドローンで攻撃した。輸出量は減少したが、短期間で攻撃前のレベルを超えるまで回復した。

 ガソリンスタンド国家ロシアの財政を支えるのは、化石燃料、中でも石油だ。昨年は原油価格の低迷もあり国家歳入の23%に落ち込んだと推測されるが、通常は30%から50%の歳入を支えている。石油関連設備を攻撃し収入を減らせば、ロシアの軍事費にも影響がおよぶ。

 インフラ攻撃では短期間の輸出減しか実現しなかったので、ウクライナはドローン攻撃の主なターゲットを製油所に切り替えた。

 ロシアの25年の精油能力は日産672万バレル、精油の実績は490万バレルだった。製油所の攻撃によりロシアの精油能力は大きな打撃を受けた。

 精油量は落ち込み続けている。6月の生産は前年同月比25%減の日産395万バレル。ガソリンの生産量は103万バレルが85万バレルに17%減少したと報道された。

 5月の石油製品の海上輸出実績は前月比10%減となった(図-5)。CREA(Centre for Research on Energy and Clean Air)は、6月の海上輸出量は前月比21%減の大幅な落ち込みになったと伝えている。

 原油の生産もウクライナの攻撃のためか減少している。図-6が国際エネルギー機関(IEA)による1月から6月までの生産量の推移を示している。IEAは生産の低迷は続き、来年は日産880バレルと予測している。

 7月初旬の攻撃は、初めてウクライナから2500キロメートル離れた製油所も対象になった。ウクライナは大きな打撃を与え、ロシアの精油能力の最大4割が失われたと発表されている。


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