ただ報道によれば、自治体当局からは被害者の身元などの詳細は明かされなかったという。理由は不明だが、過度に不安をあおる事態を避けようとした可能性もある。また被害者の中には「(ドローンの襲来を伝えるべき)サイレンの音はまったく聞こえなかった」と証言した人もいるなど、当局の対応に疑問を投げかける声もあった。
ドローン攻撃についてウクライナ当局は詳細を明かしてはおらず、その背景はわからない。ただ、ドローン墜落現場から約6キロメートルの地点には、ロシア産天然ガスを黒海経由でトルコに輸出するブルーストリーム・ガスパイプラインの施設があるという。ウクライナ軍は7月にも、ドローンを使って同パイプラインのインフラ施設を攻撃していた。
3日にドローンが落下した直前には、銃撃音が聞こえたとの報道もあり、ドローンが何らかの不具合を起こし、ビーチに落下した可能性もある。いずれにせよ、無関係の海水浴客らが巻き添えになった格好だ。
広がる民間被害
戦火がロシア国内で直接的な被害をもたらす状況は、確実に広がりつつある。春以降に本格化したウクライナ軍によるドローンを使った長距離攻撃はまず、石油や天然ガスといったロシアの主要輸出品のエネルギー資源に直接的な打撃を与え、さらにロシア最大手のネット通販サイト「ワイルドベリーズ」の倉庫が繰り返し狙われた。
攻撃により、原油生産国であるはずのロシアで、ガソリンスタンドの前で車が長蛇の列をなし、その光景が全世界に報じられた。ロシア国内の石油精製施設の約3分の1が稼働を停止し、経済的な打撃も被った。ワイルドベリーズの倉庫への攻撃は、ロシアの小売業の4分の1を占めるネット通販市場に甚大な影響を及ぼし、ネット通販に頼る中小企業の経営を直撃した。
8月10日にロシア中部タタルスタン共和国ニジネカムスクで行われた攻撃では13人が死亡、75人が負傷したと報じられた。ウクライナ軍参謀本部は同日夜、「ロシアの軍事力削減の一環として、タネコ石油精製所を攻撃し、施設で火災が発生した」と明かした。タネコ精製所はロシア最大規模の石油精製所と報じられており、6月にもウクライナ軍による攻撃を受けていた。
死亡した13人のうちの9人は労働者で、付近の安価なホテルに宿泊していたタジキスタン、ウズベキスタンから来た労働者だったという。残りの4人は、ドローンが市内の木にぶつかって爆発した影響で巻き添えになったとみられている。地元当局は、9人の労働者について「避難しているべきだったが、その規律を守っていなかった」と表明した。
ウクライナの民間人死者は過去最多に
一方で、ウクライナの民間人死傷者は増加を続けている。国連によれば、今年6月にウクライナ国内で死亡した民間人は293人、負傷者は1990人となり、死傷者数は単月として22年以降で最多を記録したという。
26年1~6月に死亡したウクライナの民間人は少なくとも1396人、負傷者は7978人に上り、25年の同時期と比べ37%増加、24年同期比では114%も増えた。民間人死傷者の大多数はウクライナ政府の支配地域で発生したといい、ロシアによる攻撃で死傷した実態が浮かび上がる。
首都キーウですら長距離攻撃により被害が増大している。国連によれば、キーウで6月に死亡した民間人は11人、負傷者は112人だった。防衛ミサイルシステムが逼迫するウクライナは、ロシアによる弾道ミサイル攻撃を防ぐ手段が限られており、ロシアが秋以降にさらなる攻撃の激化を計画している可能性が高い。
