決勝でスペインに敗れたものの、大会通算得点記録を更新し、最優秀選手の2位にあたるシルバーボールを受賞。そのプレーは衰えを感じさせるものではなく、経験と判断力によって試合を支配する新しいスタイルを完成させていた。
史上最も多くの課題を残した大会
26年大会はFIFAに史上最大の利益をもたらし、北米でのサッカー人気を飛躍的に高めた。その成功は疑いようがない。しかし同時に、政治介入や過度な商業化、開催環境の格差といった、新たな課題も世界へ突きつけた。30年大会は、モロッコ、ポルトガル、スペインをメインに開催され、100周年記念としてウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイで初戦が行われる史上初の3大陸・6カ国共催大会となる。
だからこそ、26年大会の経験は極めて重要になる。まず、二度と繰り返してはならないのは政治介入だ。ルールや処分が開催国の政治的圧力によって左右されるような前例を許せば、W杯が築いてきた100年以上の信頼は崩壊する。競技の公平性と政治的中立性は、いかなる事情があっても守られなければならない。
その一方でハイドレーションブレイクはテレビ中継で広告を入れるタイミングを与えるだけでなく、競技面でメリットを感じさせる部分もある。30年大会でも酷暑が予想されるモロッコやイベリア半島では、選手の健康管理と試合の質を維持する上で重要な制度になる可能性が高い。
さらに48カ国制が生んだ「小国にも世界を驚かせるチャンスがある」という価値も、W杯が持つ魅力の一つとして残されるべきだろう。インファンティーノ会長は64カ国に増やす案も示唆している。当たり前だが、ビジネス的な面のみならず、競技として選手や観客に与える影響も想定していくべきだ。
開催地による環境格差や過密日程については改善の余地がある。複数国開催が今後の主流になるのであれば、スタジアム環境や移動条件を可能な限り平準化し、すべての参加国が公平な条件で戦える仕組みづくりが不可欠となる。26年W杯は、「史上最高のビジネス」と「史上最も多くの課題を残した大会」という二つの顔を持って終幕した。
商業化は競技の発展を支える原動力となる一方で、過度に進めば競技そのものを変質させる危険もある。政治との距離を誤れば、W杯が築いてきた信頼は一瞬で揺らぐ。しかし、スポーツ科学の進歩や新興国の台頭は、フットボールの可能性をさらに広げる契機にもなった。
26年大会はサッカーという競技が「守るべき伝統」と「受け入れるべき進化」の間で新たな均衡点を探し始めた大会だったと言える。その答えが示されるのは、4年後の30年大会である。
