インファンティーノ会長はこの進言が裁定に影響を与えた事実を否定したが、トランプ大統領自身も後に「彼は何も悪いことをしていない。出場させるべきだと伝えた」と語り、FIFAとの近すぎる関係を隠そうとはしなかった。
欧州ではこの決定に猛反発が起こる。欧州サッカー連盟(UEFA)のアレクサンデル・チェフェリン会長は「FIFAは越えてはならない一線を越えた」と批判し、抗議の意思表示として決勝戦の観戦を取りやめた。『BBC』は「開催国の政治権力がルールを書き換えられるのであれば、競技の公平性は存在しない」と報道し、『The New York Times』も「スポーツの中立性そのものが試された事件だった」と指摘した。さらに『ESPN』は「サッカー界の信頼の根幹を切り裂いた」と酷評している。
皮肉にも、処分が覆されて出場したベルギー戦でアメリカは1-4の完敗。政治介入によって競技の信頼を失いながら、結果も得られなかった結末は、この大会最大の教訓となった。ワールドカップは世界最高峰の競技会である以前に、「公平性」への信頼で成り立つイベントでもある。その根幹が揺らいだことは、26年大会最大の負のレガシーと言っていい。
アメリカ流ショービジネスは何を変えたのか
もう一つ、大きな議論を呼んだのがアメリカ流エンターテインメントとの融合だった。決勝戦では約27分間にも及ぶスーパーボウル形式のハーフタイムショーが行われ、前後半にはハイドレーションブレイクが導入された。
欧州では「サッカーをショービジネス化しすぎた」との批判が相次いだ。『The Athletic』は「2ピリオド制だったフットボールが4クオーター制のスポーツへ変質した」と表現し、試合の流れや勢いを断ち切る演出を問題視した。また、テレビ放映を意識したCM枠の拡大についても、「競技より興行を優先している」と否定的な論調が目立った。
さらに大会では、アメリカンフットボールのプロリーグNFL用の最新鋭ドームスタジアムと屋外スタジアムとの環境差も問題となる。酷暑や山火事による煙の影響を受ける会場がある一方、屋内会場では常に快適な環境でプレーできたため、競技条件に明確な差が生まれたことも公平性の観点から議論された。もっとも、前半と後半それぞれの中間に設けられた3分間のハイドレーションブレイクについては保守的な批判も多々ある一方で、競技面でのメリットも残している。
アメリカやメキシコの暑さの中で、この3分間は単なる給水時間ではなかった。医療スタッフが筋肉の状態や熱中症の兆候をその場で確認できる「定時メディカルチェック」として機能し、スポーツ医学の観点から大きな意味を持った。さらに監督にとっては、試合中盤でシステムや守備の立ち位置を修正できる貴重な時間となった。
近年のサッカーではハイインテンシティーと呼ばれる、スピーディーで激しいプレーが標準となっているが、今大会の過酷な環境で、欧州主要リーグのレギュラーシーズンのように90分間同じ強度を維持することは難しい。短時間でも身体をリセットできることで、試合終盤まで高い運動量を維持できたチームも少なくない。
