「健康食品は、適切に利用すればセルフケアを支える有用な手段となりうる」
この一文が、日本医師会(以下、日医)の公式報告書に書き込まれた。2026年6月19日に公表された「健康食品安全対策委員会報告書」である。日医は長らく、健康食品に対して最も否定的で厳しい目を向けてきた団体の一つだ。それが、健康食品を「自分の健康を自分で守るための道具」として認めるという大きな方針転換を行った。これまでの歴史を知る関係者にとって、これは驚きの出来事である。
ところが、この重要な情報が日医のホームページには見当たらず、ポータルサイト「日医on-line」のニュースとして9月20日に報じられただけだった。そのためか、この報告書について報道したのは、現在のところ、健康食品の業界ニュースしか見当たらない。
そこで、この報告が何を言っているのか、それが社会に与える影響について解説する。
「健康食品は危ない」と言い続けてきた日本医師会
報告書は日医自身の過去の姿勢との違いに言及してはいないので、その2011年度以後の言動を表に示す。
日医は11年度から、全国の医師に呼びかけて、健康食品による被害の情報を集める仕組みを運営してきた。その背景にあったのは、「食品だから安心」「天然成分だから安全」という思い込みへの警戒だった。
この姿勢が最もはっきり現れたのが、15年に始まった「機能性表示食品」制度への反応である。企業が自らの責任で科学的根拠を示せば、国の審査を受けずに「おなかの調子を整える」などの効果を表示できる制度だ。
制度の導入前の14年、日医は「安易な規制緩和は国民を混乱させる」と警告した。健康食品に頼って受診が遅れ、かえって医療費が増えるという懸念も示している。
だが、姿勢は少しずつ変わっていった。18年の報告書には、国が個別に審査する「トクホ(特定保健用食品)」について、医師が相談に乗ることを前提に「一部肯定しても良い」という意見が載った。20年の報告書は、かかりつけ医が健康食品の「よき相談相手」になることを期待した。「やめなさい」から「相談しなさい」へと、重心が移ったのである。

