2026年11月9日(月)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2026年11月9日

 ユネスコの評価機関は11月5日、日本が提案していた「書道」を無形文化遺産の代表一覧表に「記載」するよう勧告した。11月30日から中国・厦門で開かれる政府間委員会で正式に決まる見通しで、実現すれば「和食」「和紙」「伝統的酒造り」などに続く国内24件目となる。

(bee32/gettyimages

 今回の提案で注目したいのは、その範囲の広さだ。対象は書家が展覧会で発表する芸術作品だけではない。正月の書き初め、手紙や年賀状、祝儀袋や香典袋の表書き、芳名帳への署名――筆と墨で文字を書くという、日本人の暮らしに溶け込んだ営みそのものが「社会的慣習」として評価された。名人の至芸だけでなく、ごく普通の人々が千年以上にわたって筆を執り続けてきたという事実こそが、人類の遺産に値すると認められたのである。

 ただし、喜んでばかりもいられない。小学校から高校まで書写や書道に触れながら、卒業後は筆を持たなくなる人が大半であり、書道人口はこの10年で3割減ったとも報じられている。

 無形文化遺産は「保存」ではなく「継承」のための仕組みだ。登録はゴールではなく、危機を直視するスタートラインと捉えるべきだろう。


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