2026年10月7日(水)

脱「ゼロリスク信仰」へのススメ

2026年10月7日

3. 医療費の流れが変わる

 軽い不調を自分で手当てする人が増えれば、医療機関の受診や保険で支払う医療費は抑えられる。一方でそれは、健康にかかる費用の一部が保険から家計に移ることも意味する。OTC類似薬の追加負担と重ね合わせると、この流れは今後さらに強まるだろう。「専門家が寄り添う」という日医の条件は、このような医療費支払いの変化が受診遅れにつながらないための安全装置と言える。

4. 健康食品の制度改革が進む

 健康食品制度は、トクホ、機能性表示食品、栄養機能食品、それ以外の「いわゆる健康食品」の4つに分類され、消費者にはほとんど理解不能な複雑さである。効果の根拠をどう確かめるかも、長年の課題だ。

 こうした議論では、日医は主に「ブレーキ」の役を果たしてきた。それが「活かし方」を議論する側に転換したことで、これらについての前向きの制度改革が進めやすくなるだろう。

残された宿題

 日医の歩み寄りは歓迎したい。ただ、この方針を実際に機能させるには、まだ解かなければならない問題がある。その一つは、業界の責任である。日医が歩み寄った今、問われているのは健康食品をつくる側だ。

 被害情報を速やかに共有する。医療者が判断に使える製品情報を開示する。次々と発売される新製品の情報が足りないことは、報告書自身も認めている。それを提供できるのは業界だけであり、医師や薬剤師が安心して「関われる」条件を整えるのは、業界の仕事である。

 もう一つは、医師や薬剤師が相談に応じる時間と知識である。健康食品の相談には、今のところ診療報酬上の評価がない。「専門家に相談を」と呼びかけても、窓口の側に備えがなければ絵に描いた餅になる。これは日医の努力が必要である。

 健康食品を「敵」として遠ざけるのでも、「万能薬」として頼るのでもない。医薬品と同様の、上手に使えば役に立ち、使い方を誤れば危険にもなる「道具」と、どう向き合うか。日医の方針変更は、その問いを、医師、薬剤師、業界、そして私たち消費者の全員に投げかけている。

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