2026年7月28日(火)

トランプ2.0

2026年7月28日

中ロ海軍の共同作戦の拡大

 このことは、日米豪比によるこれまでのASW作戦の抜本的見直しが求められることを意味している。なぜなら、冷戦当時と異なり、監視・追跡対象が量的に増えるのみならず、中ロ両国海軍による共同の作戦海域が一気に拡大することになり、従来のままの態勢では対応しきれなくなるからだ。

 実際に、中ロ両国の間では近年、軍事協力体制の「緊密化」の動きが目立っている。

 防衛省防衛研究所の飯田将史理論研究部長は、その具体例として①2012年から中国海軍とロシア海軍による海洋における共同防衛を目的とした「海上協力」演習が毎年実施され、行動範囲も日本海、東シナ海などから地中海、バルト海にまで広がっている②19年からは中露の爆撃機を中心とした「共同空中戦略パトロール」が毎年実施されている③21年からは中露艦艇による「海上共同パトロール」が始まった④23年には両国艦艇が米国のアラスカ沖を航行し、ベーリング海で合同訓練を行った後、沖縄半島と宮古島の間を通過して東シナ海まで共同で航行した―などの動きを指摘している。

 こうしたことから、今後は中露両国海軍がさらに攻撃型潜水艦、ミサイル潜水艦など多数を太平洋に展開し、海中での合同演習に乗り出すことも時間の問題となりつつある。

中国の真意

 これまでのところ、中国が今回、太平洋海域においてミサイル潜水艦発射実験を行った真意がどこにあるかは、はっきりしていない。

 米軍専門家の間では、①核戦力「トリアード」体制構築により、米国との「核のパリティ」にこぎつける意思を明確に示した②太平洋における米軍のこれまでの独占的支配にくぎをさす必要に迫られた③多大なコストと困難が伴う海外基地建設に依存することなく中国のグローバル・プレゼンスのさきがけとなりうる――などの見方が出ている。

 さらには、我が国にとっても無視できない「台湾有事を念頭に置いた対外メッセージ」だとの受け止め方もある。つまり、中国が実戦配備するSLBMでいつでも米本土を射程に収めることができれば、台湾進攻の際の米軍介入に対する強力なけん制のメッセージになる、というものだ。

 そしてもしそうだとしたら、台湾防衛に関連した海上自衛隊のASW作戦、そして日米防衛分担の拡大がこれまで以上に一層重要な意味を持つことになる。

 とくに当面の対中国ASW作戦のカギとなるのが、中国が最近配備した「093B」型攻撃型原潜および「094A」型ミサイル原潜の探知・追尾作戦だ。以前の中国の潜水艦は、出す騒音がかなり大きく、日米の対潜哨戒機などによる探知も比較的容易だったが、最近、「静寂性」がかなり改善されてきた。

 さらに、近い将来、中国が配備を予定している「096」型ミサイル原潜はエンジン、スクリュー両面で一層の性能向上が予想されるため、音響探知がかなり困難になっていくとみられる。

 しかも、新型のSLBMを搭載した中国の原潜や攻撃型原潜が今後、中国近海から深海が広がる沖縄東方、フィリピン海、マリアナ海に進出した場合、探知はより困難になり、従来のP-3C対潜哨戒機、SH-60K哨戒ヘリだけでは対応しきれなくなる恐れがある。このため、日米両国は、音響情報のリアルタイムの共有体制を確立するとともに、海底センサー網の拡充、無人潜水艇、AIのフル活用などが課題となっていくとみられる。

 永年、”平穏な(パシフィック)海“であったはずの太平洋は、21世紀半ばに向けて、”穏やかならざる海“に変化していくことは避けられそうもない。

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