日本ではAIなどIT技術を生かしたアドバンスト・エッセンシャルワーカーについて議論が行われている。欧州ではフィジカルAIの使用が進むのは製造業と予想されている。介護やゴミ回収、農業、公共交通機関などの分野のエッセンシャルワーカーについては、まだ議論が進んでいない。
労働生産性を高めるAI活用は限られる
日本の学界では、アドバンスト・エッセンシャルワーカーという概念が打ち出されている。法政大学ビジネススクール イノベーション・マネジメント研究科の山田久教授が提唱したもので、AIやデジタルのスキルを使いこなすことによって、現場の生産性を高める試みだ。エッセンシャルワーカーの支援となると、フィジカルAIが主役になりそうだ。
欧州では米国や中国に比べると、フィジカルAIの普及が遅れている。米中に匹敵する規模で生成AIの開発に成功した企業もない。
欧州連合(EU)は2024年8月1日に世界で初めてのAI法を施行させたが、これはAIの開発促進よりも、政府による市民の監視や企業による悪用など、AIに付随するリスクを最小限に抑えることを主眼としている。この事実から、欧州人たちのAIに対する慎重な姿勢がうかがわれる。
AIそのものの実用化も遅れている。ドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会(BITKOM)が26年2月に公表した報告書によると、AIをすでに使っているドイツ企業の比率は36%に留まっている。
「使っている」と答えた企業の内、88%が顧客対応、57%が宣伝やコミュニケーションに使う程度であり、「生産過程に使っている」と答えた企業の比率は20%と低かった。つまりAIが飛躍的に労働生産性を高め得る分野での使用は限られている。

