イランを軸とする中東情勢の緊迫化は、日本経済が抱える「エネルギー安全保障」という根源的な脆弱性を改めて白日の下にさらした。北緯26度、ペルシャ湾の出口に位置するホルムズ海峡は、依然として世界の海上原油取引量の約2割強、液化天然ガス(LNG)取引量の約2割前後が通過する国際エネルギー流通の最重要要衝である。ひとたびこの海域で緊張が高まれば、物理的な供給制約として直ちに国際価格へ反映される構造を我々は持っている。
財務省の「貿易統計」によれば、現在の日本における原油輸入の中東依存度は、2024年度の実績で約95%に達しており、歴史的に見ても極めて高い水準で推移している。また、経済産業省の「エネルギー白書」によれば、LNGについては豪州や米国からの調達拡大により中東依存度は約15%に抑えられているものの、世界的な需給逼迫が生じれば、アジア全体での争奪戦に巻き込まれる構造に変わりはない。
電力料金や輸送費を通じて、エネルギー問題は国民生活と企業活動を直撃する。本稿は、今回の中東危機を一過性の物価問題としてではなく、構造的危機として捉え直すことから出発したい。
エネルギー資材供給リスクへの広がり
今回の緊張がもたらした影響は、原油価格の変動にとどまらない。石油化学原料のナフサ、航空燃料、さらには肥料原料となる資材など、幅広い分野で供給不安が広がっている。
エネルギーは単なる消費財ではなく、あらゆる産業の「基礎投入財」である。その供給網が揺らげば、産業全体のコスト構造が根本から揺さぶられる。
国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」においても、ホルムズ海峡の通航制限が長期化した場合、世界貿易や経済成長が一定程度下押しされる可能性が指摘されている。現代の国際経済は高度に分業化されたサプライチェーンの上に成り立っており、特定地域の不安定化が瞬時に世界へ波及する。エネルギー危機とは、経済システム全体の機能不全として理解すべき現象なのである。
