2026年4月17日(金)

解剖:「大きな政府」を好む日本

2026年4月17日

1970年代石油ショックとの決定的な違い

 現在の危機を論じる際、1970年代の石油ショックが頻繁に引き合いに出される。当時、日本は省エネルギー投資と産業構造の転換を断行し、世界屈指のエネルギー効率を誇る国へと脱皮した。

 重要なのは、当時の政策が価格上昇を産業変革のシグナルとして活用していた点だ。資源エネルギー庁の「エネルギー白書」によれば、79年の省エネ法制定以降、日本のエネルギー消費効率(国内総生産〈GDP〉あたりのエネルギー消費量)は、その後の約10年間でおおむね3〜4割程度改善している。価格上昇を打ち消すのではなく、技術革新へのインセンティブへと転換したのである。

 これに対し、現在の政策は「価格高騰の抑え込み」に重点が置かれている。補助金による負担軽減は即効性を持つが、危機を通じて社会構造を変えるという適応の論理は弱い。

 短期的な安定と長期的な構造調整との間には明確なトレードオフが存在する。緩和に終始するのか、変革を促すのか。この視点の差が、過去と現在の決定的な違いである。

価格介入が市場機能を弱めている

 日本政府は、燃料油価格激変緩和対策事業などを通じ、大規模な価格介入を継続している。経済産業省の関連資料によれば、電気・ガス料金支援などを含めた関連施策の規模は累計で10兆円規模に達している。これにより短期的な安定は保たれているが、その副作用を看過してはならない。

 エネルギー価格は本来、希少性やリスクを社会に伝える重要なシグナルである。価格が正しく上昇することで、省エネ投資や代替エネルギー導入が経済合理的な選択となる。しかし、政策によって価格上昇が相殺されれば、こうした行動変容への圧力は弱まり、構造的脆弱性は固定化される。

 支援の長期化は出口戦略を難しくし、財政負担を積み上げる。価格介入ではなく、市場の機能をどう生かすかが鍵である。

 エネルギー危機が中長期化する可能性を前提とすれば、単年度対策の積み重ねでは不十分である。資源エネルギー庁の「電力調査統計」によれば、24年度の電源構成は、火力が約73%、再生可能エネルギーが約20%、原子力が約10%を占めている。この構成は外部ショックへの耐性という観点からは、依然として改善の余地が大きい。

 政府が検討を進めている2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、40年度に再生可能エネルギー比率を4〜5割まで引き上げる目標が掲げられている。重要なのは数値の達成以上に、不確実性の中で柔軟に調整可能な設計である。安定供給、価格変動耐性、そして技術革新の余地を同時に確保する視点が不可欠となる。


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