2026年4月17日(金)

解剖:「大きな政府」を好む日本

2026年4月17日

「助ける政策」の限界

 今回のエネルギー危機に対して、日本政府は備蓄放出や調達先の多角化といった対応を進めている。しかし、これらの政策は危機対応として一定の合理性を持つ一方で、その効果と限界を冷静に見極める必要がある。

 第一に、国家備蓄は本質的に「時間を買う装置」にすぎない。石油備蓄は数カ月単位の供給途絶には対応可能であるが、価格高騰や長期的な需給逼迫を解消するものではない。むしろ備蓄の取り崩しは、将来リスクへの耐性を低下させる側面すら持つ。

 第二に、代替調達の拡大にも構造的制約が存在する。とりわけLNGは、石油と異なり輸送・貯蔵インフラへの依存度が高く、短期的な調達先の切り替えには限界がある。グローバル市場が逼迫する局面では、「どこから買うか」ではなく「どれだけ高い価格を受け入れるか」という競争に直面することになる。

 このように見れば、「助ける政策」は危機の衝撃を緩和するにとどまり、問題の本質であるエネルギー制約そのものを解消するものではない。むしろ重要なのは、エネルギー制約を前提とした産業構造への調整である。

 具体的には、エネルギー多消費型産業の国内立地のあり方を再検討する必要がある。これまで日本は、安定したエネルギー供給を前提に素材産業や化学産業を国内に維持してきた。しかし、電力価格や燃料コストが構造的に上昇する局面においては、すべての産業を同一条件で国内に留めることは現実的ではない。

 同時に、再生可能エネルギーや原子力を含む電源構成の変化を踏まえ、「電力立地型産業」への転換も重要となる。すなわち、エネルギーコストの低い地域や時間帯に適応した生産体制の構築である。これは単なる省エネではなく、産業の立地と生産様式そのものの再設計を意味する。

 企業レベルでも対応は不可避である。長期電力購入契約(PPA)や自家発電の導入、さらには調達先の分散化といった戦略は、すでに国際的には標準的な対応となりつつある。こうした行動を促す制度環境を整備することこそが、政府の本来の役割である。

 エネルギー危機とは、単なる価格変動ではなく、経済の前提条件そのものの変化である。この現実を直視するならば、「支える政策」から「適応を促す政策」への転換は避けて通れない。


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