2026年2月26日(木)

深層報告 熊谷徹が読み解くヨーロッパ

2026年2月26日

 現在ドイツは核兵器を持っていないが、NATO・米国との核シェアリングの枠組みに参加している。ドイツが核シェアリングに基づく攻撃に参加する有事のシナリオとは、どのようなものか。

 たとえばロシア軍の戦車部隊がポーランドなどNATO加盟国に侵攻し、NATOが通常兵器では前進を食い止められないと判断したと仮定する。この時NATOの最高司令官の判断に基づき、核シェアリングが発動される。

 ドイツ連邦軍のビュッヘル空軍基地に保管されている米軍の戦術核兵器を、ドイツ空軍の戦闘爆撃機が運搬して投下する。つまり戦術核兵器はドイツにあるものの、使用の是非を決めるのは、NATOの最高司令官つまり米軍の軍人だ。メルツはMSCで、現在議論されている新しい欧州の核抑止力は、NATOの現行の核シェアリングを代替するものではないと説明したのだ。

英仏の核の傘を欧州全土に拡大か?

 欧州で現在戦略核兵器を持っているのは、フランスと英国だけだ。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、フランスが保有する、使用可能な核弾頭の数は280発、英国は120発(その他、フランスの予備弾頭数は10発、英国は105発)。

 英仏の保有数は、ロシアの1710発、米国の1670発に比べると大幅に少ない。ただし、ロシアは、「ワルシャワを我が軍の核兵器で壊滅させた場合、サンクトペテルブルクが英仏の核兵器による報復で壊滅するかもしれない。したがってNATO加盟国への侵略や、核兵器の使用は思いとどまろう」と考えるかもしれない。これが、欧州諸国が核抑止力を持とうと考える理由だ。

 ドイツが考えているのは、英仏の核の傘の下に入ることである。その理由は、フランスと英国政府は、欧州情勢がエスカレートして、戦略核兵器を使用する必要が生じた際に、米国大統領の許可を必要としないからだ。

 マクロン大統領は2025年3月に、「フランスの核抑止力を、欧州の他の国に拡大する可能性について、戦略的な協議を始める準備がある」と発言した。これはフランスの核戦略の大転換である。ただしフランスは、現在米国が行っているような核シェアリングを他国と行う気はない。核兵器はフランス国内または同国の潜水艦などに配備され、使用に関する最終的な決定権はフランス大統領が持つ。

 さらにフランスは、英国との間で核戦略をめぐって協力関係を強化しつつある。たとえばフランス軍は昨年9月に初めて、英軍の高官をパリ近郊のタベルニーにある核戦略基地に招待し、核兵器の使用を想定した演習を見学させた。「米国抜き」の欧州核抑止力の強化が必要となった今、英仏は協力関係をさらに深めるだろう。


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