カクテル効果が起こるのであれば、これらの天然化学物質により、すでに起こっているはずだが、そのような現象は観察されていない。その理由は、そもそも天然化学物質の量がそれほど多くはないことと、人間が持つ強力な化学物質代謝機能の結果である。
超加工食品の有害性の責任を添加物に負わせようとする説は、薬理学・毒性学的に成立せず、世界の食品安全機関も認めていない。
超加工食品問題への対応
現代の食料システムにおいて加工食品は不可欠な役割を果たし、高所得国では、総エネルギー摂取量の50%から70%以上を占めている。加工の目的は、おいしく、食べやすくするだけでなく、安全性、保存性の向上、価格の手頃さ、入手の容易さを確保するためである。
もちろん、おいしく、食べやすいことは過食につながり、生活習慣病の原因となり得る。この問題の答えを求めて、モンテイロ教授は「超加工食品」というアイディアに辿り着いた。ところが、皮肉なことに、この概念が答えを拒否することになった。
問題の根源を「加工」に求めれば、対策は「加工しない」ことしかない。しかし製品を加工しない方向に改良することは難しい。結果として、超加工食品という概念は「食べるべきか、禁止すべきか」という問いを突きつける。答えは明らかで、便利な生活の放棄に直結する超加工食品の禁止を、社会が受け入れることはないだろう。
それではどうするのか。参考になる事例がある。
電車や自動車などの交通手段が普及した結果、利便性は向上し、活動範囲は飛躍的に広がったのだが、その陰の部分として運動不足が慢性化し、生活習慣病の大きな要因になっている。その解決策は、交通手段の廃止ではなく、徒歩や自転車通勤の推奨である。
加工食品も同様の考え方ができる。それは、特定の栄養素の摂取量を減らすことに主眼を置くという常識的な対応に戻ることであり、すでにそのような賢明な解決策が広がりつつある。「甘味控えめ」「塩分控えめ」「糖質カット」などを謳った製品改良だ。これは加工を否定するのではなく、その利便性や経済性を維持しつつ、栄養プロファイルを改善することで健康への悪影響を低減しようとする、現実的な方策と言える。
モンテイロ教授の指摘は、加工食品に光だけでなく影があることを改めて明らかにした。この問題に関する世界的な規制の動きや科学的議論の活発化は、その便益とリスクを冷静に評価し、社会として許容できる範囲にリスクを管理していくための合理的な解決策を模索するプロセスの一環である。この新しい技術と人類が賢明に付き合っていくための道筋が生まれることが期待される。
