「砂糖は高カロリーで、肥満の原因なのか?」では、砂糖が直接的には肥満を引き起こさないことが見えてきた。次は砂糖の甘味が間接的に食べ過ぎを引き起こす可能性と、砂糖の代替として普及している果糖が肥満の原因となっている可能性について見ていきたい。
目先が変わると食べ過ぎる?
砂糖は甘いから食べ過ぎて肥満になるという考え方もある。そこで被験者に50グラム(g)の砂糖を摂取させたところ、その後20分から60分は食欲が抑制された。
甘いものは食べたいけれど、食べるとすぐに満腹感を感じて食欲がなくなるという経験はだれでもあるだろう。ということで砂糖は甘いから食べすぎて肥満を起こすという考えには疑問符が付く。
これには反論がある。欧米では食事で満腹になった後に甘いデザートを食べる習慣がある。日本でも「甘いものは別腹」と言う言葉がある。満腹になってもまだ甘いものを食べることが肥満の原因ではないかという考え方だ。これは複雑な話になる。
まずは「目先が変わると食べ過ぎる」という実験だ。被験者に同じ料理を食べさせたときと、さまざまな料理を組み合わせて食べさせたときを比較すると、カロリー換算で後者の方が食べた量が60%も多かったのだ。バイキングで何種類もの料理を見るとつい食べ過ぎてしまい、それでもさらにデザートまで食べたという経験からも納得できる説である。
食欲は摂食中枢と満腹中枢で調節される。胃が空になるとグレリンを分泌し、これが摂食中枢を刺激する。また空腹時には脂肪が分解されて脂肪酸が作られ、これも摂食中枢を刺激して食欲が高まる。
他方、胃が食物で満たされると、その情報が満腹中枢に伝わる。また糖質が分解されてできたブドウ糖が直接満腹中枢を刺激するとともに、インスリンを分泌し、これもまた満腹中枢を刺激する。脂肪細胞から分泌させたレプチンも満腹中枢を刺激する。実験で使われた砂糖50gは市販のアイスクリーム2カップ程度の量であり、血糖値の増加により満腹中枢を刺激するのだろう。
しかし、満腹になったら食べるのを止めるという生理的な仕組みでは「目先が変わると食べ過ぎる」現象を説明できない。逆の例として、ストレスがあると食欲がなくなることもよく知られている。このことは生理学的な満腹感の調節のほかに、感覚が満腹感を調節する仕組みがあることを示している。
ただし目先が変わってたくさん食べて満腹になってもなお「甘いものは別腹」現象が起こるので、目先問題と別腹問題は違う現象と考えられる。そして別腹問題は甘味が持つ特別の作用ではないかと考えられた。