米国とイランは6月21日、イラン戦争終結の最終合意に向け協議した。その中であらためて浮かび上がったのは協議の元になった覚書合意の「あいまいさ」と、経済的利益を獲得したのはイランという事実だ。
なぜこんな合意に米国は署名したのか。世論調査によると、誤算したトランプ大統領のイラン政策には65%が反対しており、秋の中間選挙に赤信号が灯った。
初日の協議で何が決まったのか
協議には米側はバンス副大統領、ウィトコフ中東担当特使、トランプ大統領の娘婿クシュナー氏らが、イラン側からガリバフ国会議長、アラグチ外相らが参加した。仲介国のパキスタンとオマーンが発表した共同声明によると、双方は最終合意に向け、覚書が定める交渉期間60日以内の「工程表」で一致した。
工程表は日程に応じて何を達成し、何を解除するのかなどを定めたものだ。覚書の履行を監視する「高級委員会」と、核、制裁、紛争解決の作業部会の設置でも合意した。要衝ホルムズ海峡と、現在の紛争の焦点であるレバノンでの衝突を回避するための「連絡網」と「調整組織」の設置でも合意した。
米国が大きく譲歩したとみられているのは海上封鎖を停止したのに伴い、従来の方針を転換して制裁を一部解除、60日間に限ってイランに石油輸出や販売を認めたことだ。イランは膨大な利益を得るとみられている。
イラン側はまた、米国が240億ドルの凍結資産の解除も始めたと主張した。バンス氏はイランがこの資産を使い米国から大豆やトウモロコシなどを購入する、と語った。
米国は戦争で破壊されたイランの復興のため、3000億ドル(48兆円)に上る「復興基金」を設立することになっているが、今回の協議で取り上げられたかは不明。トランプ大統領は「米国は1セントも出さない」としており、ペルシャ湾岸産油国に負担させる考えだ。しかし、それでもなお費用は足りないとみられ、ホルムズ海峡利用で恩恵を受ける日本などに負担を求める懸念もある。
後ろから鉄砲玉
制裁や凍結資産の解除に米国がなぜ応じたか。その疑問を解くカギは覚書の13項目にある。
同条項は「覚書に署名した後、覚書に記述された項目の実施を条件として、最終合意に向けた協議を開始」と記しており、制裁や凍結資産の一部解除が協議開始前に実行される必要がある。イラン側の巧みな交渉術がうかがわれる。
