2026年8月3日(月)

台湾「麗しの島」の実像

2026年8月3日

 中国の軍事的圧力の最前線に立たされている台湾は、その脅威と常に隣合わせだ。特に、習近平政権以降は、明らかに深刻化しているという。そこで、台湾の国防部が設置したシンクタンク・国防安全研究院の助研究員を務める許智翔氏に、今の率直な思いを聞いた。

許 智翔 Sheu, Jyh-Shyang 国防安全研究院 博士、助研究員(SHEU,JYH-SHYANG)

 台湾は長期にわたり、中国人民解放軍(以下、中国軍)によるグレーゾーン作戦を受けており、その脅威は習近平政権時代から年々深刻化している。 

 2015年頃から始まった中国軍用機の防空識別圏への侵入は、15年から16年にかけて年間50回程度だったが、昨年は5000回を超えた。海洋では海底ケーブルの切断などの問題も生じている。これは一種の「消耗戦」だ。ミサイルや銃こそ使わないが、日常的な嫌がらせを通じて台湾軍の装備品や燃料を枯渇させ、兵士の士気まで低下させるのが目的だ。台湾軍は常に適切な対処に追われている。台湾社会も、経済的圧力や社会への浸透工作を通じて、政治、教育、文化などあらゆる方面からの脅威にさらされている。

 我々は、中国の「レッドライン」に留意し中国を意図的に刺激しないよう配慮するが、重要なのは単に彼らの要求に合わせすぎないこと。なぜなら、状況に応じて変化するレッドラインに対して、ボトムラインを死守することは非常に重要だからだ。同時に、我々は中国側に善意を示そうともしている。対話を望み、話し合いの場を持ち、お互いを認めたいと考えているが、習近平政権から、対話に「前提条件」を強く設けたがるようになった。例えば、「台湾は中国の一部である」と認めさせるような条件だ。習近平政権以前は、この問題にはあえて触れず、台湾と中国の対話ははるかに容易だった。

 今の中国とは対話が難しいからこそ、台湾は経済関係を完全に断絶する「デカップリング」ではなく、ビジネスを維持しつつ経済的威圧のリスクを分散する「デリスキング」を選択している。他国との協力を強化しているのはそのためだ。将来的に、中国と平和的な対話を行うためには、他国からの支持や協力が不可欠だ。台湾は独自の軍事産業を持つものの、装備面では依然として米国の支援に大きく依存している。中国に対する「抑止力」は、他国との日常的な連携や米国からの防衛支援があって初めて成立するのだ。

 日本に対して求めたいのは、周辺海域での自衛隊の「プレゼンス」の発揮や、情報交換、米国などと緊密に連携した外交的アプローチなどだ。最も重要なのは、各国が足並みをそろえて「この地域に関与し、戦争を望まない」という明確なメッセージを示すこと。民間レベルで「相互理解」を深めることも重要だ。なぜなら、日本の人々が台湾の置かれている状況を理解し、「もっと協力し合う必要がある」と感じてくれることは、世論が政策を動かす〝民主主義国家〟において、台湾を支えてくれる強固な基盤となるからだ。

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