2026年6月13日(土)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2026年6月3日

中国が支配したのは資源ではなく工程だった

 問題はここからである。日本は磁石を発明した。しかし中国は、レアアース分離、精製、磁石製造、サプライチェーンを支配した。

 つまり、「資源」ではなく「工程」を支配したのである。私は昔から、「鉱山を持つ者より、工程を支配する者が勝つ」と言ってきた。

 まさに今、それが現実化している。中国の強さは、単なる埋蔵量ではない。分離精製から磁石製造までを一気通貫で押さえた“工程国家”である点にある。

市場はAI文明インフラを買い始めた

 今回の相場で印象的だったのは、半導体株だけでなく、非鉄、電線、電力、素材、エネルギー、工程支配企業にまで資金が波及し始めたことである。

 これは極めて重要な変化だ。市場は単に「AI関連株」を買っているのではない。「AI文明を支えるインフラ全体」を買い始めているのである。

 日経平均が市場初の65000円台を許容し始めた背景にも、私は同じ構造を見る。市場は単なる半導体ブームではなく、“AI文明インフラへの超長期投資時代”を織り込み始めているのである。

 ここに来て、私が半世紀以上現場で見続けてきた山師の論理が、ようやく市場に理解され始めた気がする。

工程支配企業こそ次の勝者になる

 では、これからの世界で本当に強い企業とは何か。単純な資源企業ではない。完成品メーカーだけでもない。本当に強いのは、「工程支配企業」である。

 日本には今なお、半導体製造装置、精密加工、材料技術、高純度化、品質安定、条件出しといった“見えない技術”が残っている。

 これは単なる製品ではない。「止まらない生産ライン」を支える能力なのである。AI時代とは、停止コストが天文学的になる時代である。世界の工場では、一時間止まるだけで巨額の損失が発生する。だから最後に勝つのは、派手な企業ではない。「止めない企業」である。

 私は世界116カ国を歩いてきたが、国際市場で最後に最も高く評価されるのは、結局「信用」だと痛感している。

AI革命は静かな資源戦争を激化させる

 AI革命は、一見すると華やかで未来的に見える。だが現実には、銅、タングステン、レアアース、ニッケル、リチウム、コバルト、ガリウム、インジウム、タンタルなど、膨大な資源を必要とする。

 つまりAI革命とは、「静かな資源戦争」でもあるのだ。そしてその争奪戦の裏側では、電力、送電網、磁石、工程支配という、地味だが極めて重要な領域で、新たな覇権争いが始まっている。

山師として見えてきた未来

 私は最近、相場を見ながら強く感じる。本当に重要なのは「AI銘柄」そのものではない。その背後にある、「文明インフラ」である。AIは幻想ではない。

 だが、AIだけでは文明は動かない。必要なのは、電力、資源、磁石、工程、信頼、サプライチェーンなのである。だから私は今後、「AI革命はレアメタル革命でもある」という視点が、ますます重要になると確信している。

 京都の静かな青もみじを見上げながら、私は時代の奇妙な巡り合わせを思う。人類はAIという最先端文明へ突き進んでいる。だが、その足元では今なお、鉱山、精錬、磁石、送電線という極めて古典的な世界が文明を支えているのである。

 未来とは、案外そういうものなのかもしれない。そして山師たちの季節が、再び始まろうとしている。

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