2026年6月13日(土)

解剖:「大きな政府」を好む日本

2026年6月3日

 「また始まった」というほかない。借金を借金と呼ばず、支出拡大を支出拡大と呼ばない。耳ざわりのよい新語を並べ、本来なら警戒されるはずの財政膨張を通しやすくする。いま日本政治が進めようとしているのは、まさにその手法である。

(kuppa_rock/sauvignon/gettyimages)

 自民党の日本成長戦略本部が示した「つなぎ国債」構想は、高市早苗政権の掲げる「強い経済」の実現に向け、危機管理投資と成長投資の財源として「つなぎ国債」を活用し、債務残高対国内総生産(GDP)比やプライマリーバランス(PB)などの財政指標とは別枠で管理しようとするものである。通常歳出とは別に「新たな投資枠」を設け、複数年度で財源を確保しつつ、危機管理と成長のための支出を進めようという構想だ。だが、ここで読者がまず見抜くべきは、「新しい財源ができた」のではなく、「借金を借金と見えにくくする工夫」が提案されているにすぎないという点である。

 国の財布から見れば、つなぎ国債も国債である。政府の債務であることに変わりはない。債務残高対GDP比やPBの計算から外したところで、国民負担の実体が消えるわけではない。家計で言えば、借入金を家計簿の別欄に書き直しただけで、借金そのものは残っているのと同じである。

 つなぎ国債という言葉には、一時的で、限定的で、返す当てがあるから安心だという印象がある。しかし、名称を変え、管理の箱を変えれば財政規律が守られたことになるという発想自体が、すでに危うい。見えなくしたいのは借金ではない。政治責任の方である。

「つなぎ」のまやかし

 そもそも「つなぎ国債」という言葉が巧妙である。「つなぎ」と聞けば、一時的で限定的で、いずれ返す当てがあるから安心だという印象を与える。しかし、国家財政において「一時的な借金」は、たいてい一時的では終わらない。

 東日本大震災後の復興債は、発行計画額が22兆5395億円、2020年度末までの発行実績額が17兆3933億円余に達し、20年度末時点の復興債現在額も6兆7845億円余であった。GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債についても、23年度以降10年間で20兆円規模の発行が制度化され、すでに24年2月には約1.6兆円が発行、24年度には1.4兆円、26年度国債発行計画では「GX経済移行債等」が2.3兆円と記載されている。言葉は「つなぎ」でも、現実は十兆円単位の長期債務なのである。

 しかも、こうした仕組みは必ず「例外」として始まる。復興のためである、脱炭素のためである、危機への備えのためである。どれも目的そのものは否定しにくい。だが、目的が重要であることと、借金が軽くなることとは別である。

 将来の償還財源が法的に定められていると説明されても、その財源が本当に十分なのか、将来の政治が守り切るのかは別問題だ。返済の約束を先に書けば安心だというなら、日本財政がここまで苦しむことはなかったはずである。

 これは財源論ではない。借金の化粧直しである。


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