11月4日に実施された東部ニュージャージー州と南部バージニア州の知事選で、ラテン系とアフリカ系の有権者の投票行動に変化がみられた。また、トランプ関税を巡り米連邦最高裁判所で口頭弁論が行われ、早ければ年内に判断が下される。さらに、ここにきて未成年者に対する性的犯罪に関するジェフリー・エプスタイン元被告(2019年独房で死亡)とドナルド・トランプ米大統領(以下、初出以外敬称および官職名等略)の関係が再度浮上してきた。今回は、これらのトランプを悩ます3つの懸念材料に焦点を当てて述べる。
ラテン系とアフリカ系の票
第1に、11月に実施されたニュージャージー州とバージニア州での知事選で、民主党がラテン系とアフリカ系の票を共和党から取り戻したことである。今年2月、ジェリー・コノリー下院議員(民主党 南部バージニア州第11選挙区 5月21日死去)に、首都ワシントンD.C.の彼の事務所でヒアリングを行ったとき、コノリーは闘病生活を送っていたが、約45分も来年の中間選挙を予想するポイントを熱く語った。
「11月にニュージャージー州とバージニア州で知事選がありますが、民主党が共和党から奪還すれば、来年の中間選挙で民主党が勝つ予告になると思います」
コノリーはこう述べた。このときのバージニアの州知事は共和党のグレン・ヤンキン氏であった(11月の選挙の結果、26年1月に退任する予定)。
バージニア州知事選は、民主党候補のアビゲイル・スパンバーガー元連邦下院議員が、共和党候補のウィサム・アール・シアーズ副知事を約15ポイントの得票率の差を持って破った。その結果、女性初の同州知事が誕生することになった。2024年米大統領選挙においてバージニア州では、カマラ・ハリス副大統領(当時)がトランプを破ったが、得票率の差は、6ポイント弱であった。
さらに、米CBSニュースの出口調査では、ラテン系の67%がスパンバーガーを支持した。米ABCニュースの出口調査では、共和党のシアーズがアフリカ系であるのにもかかわらず、スパンバーガーはアフリカ系有権者の10人の内9人から支持を得た。
同様の結果が、東部ニュージャージー州で行われた知事選でもみられた。勝利した民主党候補のマイキー・シェリル連邦下院議員(東部ニュージャージー州第11選挙区)は、米CBSニュースの出口調査においてラテン系の68%の支持を獲得した。
また、AP通信の出口調査では、アフリカ系の94%の支持を得た。昨年の大統領選挙において、トランプはラテン系の男性有権者の50%を獲得し、ハリスを2ポイント上回った。アフリカ系の男性有権者については、21%がトランプに投票した。2020年の大統領選挙ではその数は12%であった。
ラテン系やアフリカ系の男性は、マッチョな男性を好む傾向があり、しかも、ジャマイカ出身の父親とインド出身の母親を持つハリスを黒人とみなしていなかったことが、ハリスにマイナス要因となった。ハリス敗北の背景には、「性」と「人種」の問題が存在していたのだ。
この点、スパンバーガーとシェリルの両氏は白人女性であり、今回の知事選で共和党からラテン系と黒人の票を確実に民主党に取り戻した。肉体的強さや性および人種ではなく、物価高の直撃を受けた低中所得者のラテン系やアフリカ系が、民主党候補に投票したという分析が成り立つと言える。
来年11月3日の中間選挙まで1年を切り、トランプは米国民の目を物価高から外交問題にそらし、外交で得点を稼ぐ戦略を止め、物価高対策に本格的に時間とエネルギーを費やさなければ、ラテン系とアフリカ系の有権者を再び引き戻すことは困難になるとみてよい。トランプは早速、コーヒー豆や牛肉、バナナなどの輸入食品に対する相互関税を対象から外した。
このまま、物価高が続けば、民主党は低中所得者の共和党を支持する白人男性の票も獲得する機会を得るかもしれない。
今年2月に、2012年米大統領選挙でバージニア州フェアファックスにあったオバマ選挙対策事務所の責任者を務めたパーカー・ラムズデル氏に、ワシントンD.C.でヒアリングをしたが、民主党がトランプ共和党を破るには、白人男性の票を是が非でも獲得しなければならないと強調した。
トランプにとって、ラテン系とアフリカ系の投票行動の変化は懸念材料になっている。
