2026年3月13日(金)

食の「危険」情報の真実

2026年3月13日

農家の生産コスト増も

 農薬メーカーの業界団体「クロップライフジャパン」の岩田浩幸会長は、「環境保全や環境との一層の調和は持続的な農業生産を図る上でも重要な事項であり、科学技術の進展に応じ、新たな評価方法の導入は必要」としつつ、「気候変動によって病害虫・雑草の発生地域が拡大し発生量も増大している。こうした状況の中、長期影響評価導入で農薬の再評価期間がさらに延びれば、新たな病害虫や雑草の防除など生産現場のニーズに迅速な対応ができなくなる可能性がある」と指摘する。

 農薬の長期試験を行うには数年の歳月と数千万~数億円単位の投資が必要となる。再評価にかかる莫大な費用は、経営基盤の弱い国内メーカーの撤退や農薬価格への転嫁で農家の生産コスト増を招く懸念がある。

 さらに、長期影響評価の結果、これまで使うことができた農薬が使えなくなる可能性も出てくる。「欧州連合(EU)など他の先進国で禁止された農薬は日本でも禁止するべきだ」と思うかもしれないが、亜寒帯や乾燥した地中海性気候の欧米と、高温多湿で病害虫の発生が極めて激しく雑草が繁茂する日本では、農薬に対する依存度と必要とされる防除強度が根本的に異なる。

 化学農薬を使わない有機栽培が推奨されているとはいえ、農業人口が減る中で、収穫量を確保して農業で収入を得るのに農薬はなくてはならないものといえる。

 農薬が使えず、病害虫を防げなくなった農地では収穫量が落ち、日本の食料自給率はさらに低下する。今以上に輸入食品に頼らざる得なくなれば、日本の食料安全保障にとって好ましくない状況であることは間違いない。

「持続可能な共生」のために

 もちろん、悠仁親王がご覧になった橋の上を俊敏に飛ぶトンボの姿は、多くの日本人にとって守りたい日本の風景だろう。それは、豊かな自然と、それを守り育んできた農業の営みが両輪となって存在してきた。しかし、トンボを守るために追加された農薬の長期影響評価によって使えない農薬が増えれば、農業そのものが崩壊し、トンボにとってますます住みにくい環境になるのではないか。

 生物多様性の保全と食料安全保障。この二つを対立させるのではなく、いかにして「持続可能な共生」の着地点を見いだすか。多角的な視点での議論を期待したい。

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