トンボは減っているのか
欧米先進国では長期影響評価の実施がスタンダードとなりつつあり、国際標準(グローバルスタンダード)に合わせようという意図もある。
日本トンボ学会・自然保護委員会委員の喜多英人さんは「急性毒性の評価のみならず、長期にわたる農薬の影響評価を取り入れようとする試みは大きな進歩といえる。農薬というのは、すでに欧米諸国の多くで使用禁止を含めた強い規制がなされているネオニコチノイド系を主眼においているものと思いますが、長期間にわたる影響を調べてもらい、日本でもこれらの農薬をやめる方向にもっていってもらえれば」と長期影響評価の導入に期待を寄せる。
喜多さんによると、日本でトンボ全体が以前に比べ増えたか減ったかのデータはないが、とくにこの数年、調査で全国の里山を訪れるたびにトンボが減っていることを実感するという。
ただ、たとえトンボが減っているとしても、それが農薬のせいだけなのかは議論のあるところだ。温暖化や乾燥化、暑すぎて長くなった夏に短い秋、耕作放棄地の増加、ソーラーパネルの設置など、トンボにとって日本が住みにくくなっていることは間違いない。
脱炭素とのジレンマも
地球温暖化対策(脱炭素)として農林水産省が推奨する田んぼの「乾田直播」への移行も、トンボの生息に大きな影響を与えるとみられる。乾田直播は、水田からのメタンガス排出を抑え二酸化炭素(CO2)削減に寄与する栽培法だが、水田を乾かすことによってヤゴ(トンボの幼虫)の生息地である「水辺」を消失させることになる。
CO2削減も取り組まなければいけない喫緊の課題だが、そのために行う対策により、結果としてトンボが住む環境がなくなり生物多様性が失われてしまう。あちらを立てればこちらが立たずの状況だ。
