UAEのエネルギー輸出構想
UAEは石油輸出国機構(OPEC)を脱退したことにより、生産調整の制約を受けなくなり、原油を大幅に増産できる見通しとなった。今後、原油や石油製品、LNGの供給能力が大きく拡大する可能性がある。
加えて、ホルムズ海峡を迂回する新たな石油パイプライン「西東パイプライン」の建設を急いでいる。アブダビ政府広報局は26年5月、UAEが27年までにフジャイラ港経由の石油輸出能力を倍増させる方針を発表した。
新パイプラインが稼働すれば、フジャイラ向けパイプラインの合計輸送能力は約330万bpdに達する。さらに、貯蔵施設や輸出ターミナルの整備状況を踏まえれば、フジャイラ港からの原油輸出能力は最大400万bpdまで拡大する可能性がある。
石油製品についても、迂回輸出能力の強化を進めている。「フィナンシャル・タイムズ」によれば、ホルムズ海峡が通航不能となった場合でも、ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料などの石油製品輸出を継続できるよう、UAE初の多燃料パイプラインの建設も計画している。原油に加え、石油製品もホルムズ海峡を迂回して大量に輸出できる体制の構築を目指している。
さらに、LNG輸出でもホルムズ海峡への依存を下げる動きがみられる。中東経済誌「MEED」は26年6月、UAEがホルムズ海峡の外側に新たなLNG生産施設(年産400万トン)を建設する計画も検討していると報じた。建設地はフジャイラ首長国またはシャルジャ首長国の東部港湾施設周辺となる可能性がある。
UAEのLNG生産施設には、ペルシャ湾側に位置するダス島LNG液化施設(年産560万~600万トン)や、建設中のルワイスLNG(年産960万トン)がある。しかし、LNG運搬船がホルムズ海峡を通航できなければ、両施設からのLNG出荷が制約されるため、UAEはフジャイラ周辺にLNG生産施設そのものを新設し、同海峡に依存しない輸出能力を確保しようとしている。
インド・UAEにエネルギー共同備蓄
インドとUAEのエネルギー関係の強化を象徴するのが、両国による共同備蓄である。インドの戦略石油備蓄(SPR)プログラムでは、04年にインド戦略石油備蓄公社(ISPRL)が設立され、南部のアンドラ・プラデシュ州ビシャカパトナム、南部カルナータカ州マンガロール、同州パドゥールの3カ所に地下貯蔵施設が整備された。
第1期の合計貯蔵能力は530万トン(約3900万バレル)で、インドの原油需要の約9.5日分に相当する。なお、インドの石油販売会社は原油および石油製品を合計64.5日分に相当する貯蔵能力を有している。
UAEはインドのSPRプロジェクトに大きく関与している。アブダビ国営石油会社(ADNOC)はマンガロールのSPR施設に約586万バレルの原油を自社負担で貯蔵する契約をISPRLと結び、18年に搬入を開始した。インド政府によれば、ADNOCはインドのSPRに原油を保管した初の外国企業である。
この枠組みでは、非常時にインド政府が同施設内のADNOC原油を利用できる一方、平時にはADNOCが一部をインドの製油所に販売できる。その後、20年にインド政府が同原油の再輸出を認めたことで、インドのSPRは緊急備蓄にとどまらず、商業的な原油貯蔵ハブとしての性格も帯びるようになった。
さらに、26年5月のモディ首相によるUAE訪問時に結ばれた戦略協力覚書では、ADNOCがインド国内のSPRに保管する原油を、既存分を含め最大3000万バレルまで拡大する可能性が示された。備蓄施設の対象には、アンドラ・プラデシュ州の既存施設や、オディシャ州チャンディコールでの新規施設の開発(SPRプロジェクト第2期)が含まれる。
