2026年7月13日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年7月13日

 第三に、地域情勢は15年よりも難しい。イスラエルがどう出るかが重要である。15年当時は、イスラエルは、イランを攻撃したいと長年思っていたものの、米国からの支持・支援が得られず、それができない状況であった。ところが、その制約は昨年6月に取り除かれてしまった。

 イスラエルは、23年10月にヒズボラからの攻撃を受けて以来、ヒズボラをはじめとするイランの代理勢力と戦い、現在では、ガザ、レバノン、パレスチナ自治区、シリア、イラク、イエメン、イランと「七つの戦線」で多正面作戦を展開している。国内政治上、ネタニヤフは、戦争の継続が自分の政治的生き残りになると判断しているようだ。「覚書」において「最終合意ではレバノンを含む全戦線での恒久的な戦争終結を確認する」とされているが、極めて高いハードルである。

 第四に、イランの核計画は15年よりもはるかに進展し、二回の武力衝突を経て、イランは核開発オプションを絶対に放棄しようとはしないであろう。これまでイランは核兵器を持つ一歩手前で止まり、いつでも核保有に転じることができるようにするという「核の寸止め」戦略をとってきていると覚しい。イランは「覚書」において「核兵器の調達や開発をしないことを再確認する」と言っているが、これは、現時点では核保有に至っていないことを意味するに止まると解すべきであろう。

 第五に、米国はイランに対し、ホルムズ海峡という「弱み」があることを示してしまった。無論、イランにも「弱み」はあるが、国内体制上、どちらが「弱み」に敏感かと言えば、米国の方であろう。

それでも、互いに全面衝突は避けたい

 このように最終合意に向けて、ハードルは極めて高い。とはいえ、ガスも指摘している通り、今回の「覚書」は、米国もイランも全面的武力衝突を止めることに利害が一致したことを意味している。国内に強硬派を抱える中、双方が満足するような合意の達成は難しく、その一方で、双方とも全面的な武力衝突の再開は避けたいと考えているというのが現在の構図であろう。

 そうだとすれば、当面は、平和と全面戦争の中間の、やきもきする状況の継続になるのではないか。「交渉期限を何度も延長し、時に衝突が起こったりしつつ、交渉が長引く」とのガスの見立てに賛同できる。

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