中国を引き込むためには、米国も、核兵器の上限は「対称的」なものでなければならないとか、協議の対象は核弾頭に限られ、ミサイル防衛や宇宙兵器は含まれない等条件へのこだわりを緩める必要がある。合理的な最小限抑止に合意すべく軍縮協議に加わることは、中国にとってもプラスであろう。
中国の軍拡によって米国が核配備の拡充に動けば、中国としても多くの費用をかけて対応をとらなければならなくなる。軍備管理協議に加わることで自ら述べている「責任ある」大国であるという主張を裏づけることができる。
米ロ間で戦略核兵器の相互査察もデータ共有もされず、中国との間ではそうした仕組みすらない現状は、軍備管理以前の時代の懸念が甦ってくる。新たな仕組みが切実に求められている。核兵器の数が多ければ、その分、破局のリスクが高くなるのだから。
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中国核増強の時期
7月6日の中国による原潜からの弾道ミサイル発射から約1週間後に掲載されたフィナンシャル・タイムズの社説であるが、いくつもの点で違和感を覚えざるを得ない。
違和感の第一は、「中国は、長年、最小限核抑止に満足してきたが、今回のミサイル発射は、核戦力の拡大とともに、陸、海、空の三本柱構築への進展を示すものである」と中国の核増強を最近の現象であるかのように捉えている点である。
中国は、毛沢東時代に核開発に着手したが、毛沢東は、「核は持っていることが重要で、多く持つ必要はない」と核ミニマリズムの考えをとり、最小限抑止の考えの基礎となっていた。それが、今日のような核増強路線に転換した時点がいつかを明確にすることは困難ではあるが、90年代半ばには、既に核戦略の転換があったのではないかとの指摘が出ていた。
90年半ばと言えば、湾岸戦争での米国の圧倒的な戦力を見たこと、95~96年の台湾海峡危機で米国に圧倒されたことで、中国が戦力の増強、近代化に乗り出したとされる時期である。核運用を担う「第二砲兵部隊」が「ロケット軍」に再編、格上げされたのは15年のことであるが、中国がごく最近まで核増強を抑制していたかのように捉えるのは情勢認識として、どうかと思う。
管理枠組みを壊す中国の核軍拡
違和感の第二は、「中国の核軍拡は、冷戦時の軍備管理の枠組みが壊れたことで拍車がかかっている面がある」と米ロ間の核軍縮・軍備管理の枠組みの崩壊が中国の核軍拡の一因との認識を示していることである。これは、時系列から見ても、因果関係から見ても、理解しがたい指摘である。
