2025年2月11日(火)

新幹線を支える匠たち

2025年2月2日

「マッハ便」開発の裏側
彼らはなぜ実現できたのか?

 JRTLは「東海道マッハ便」という新たなサービスをスタートした。「こだま」の11号車にある業務用室を活用して荷物を運ぶサービスだ。東京─新大阪間を結ぶ「こだま」はおよそ1時間に1本あり、所要時間は4時間程度。トラック輸送と比べれば格段に早い。

「東海道マッハ便」は、新幹線ならではの特性を生かしたサービスだ

 マッハ便を使ってJR東海のグループ会社が製造する名古屋の名物スイーツ「ぴよりん」を東京駅まで運ぶことになった。とろけるような食感のぴよりんは衝撃に弱く、輸送時に型くずれしやすい。このため名古屋以外で売られることはめったにない。荷物をいかに安定した状態で運ぶか。相原さんたちスタッフは、台車にクッションを敷いたり、ホームの黄色い点状ブロックを通過するときには段ボールをクッション代わりに敷いたりして衝撃を緩和し、無事納品することができた。「マニュアルにないことは、現場でやれることを考えた」と相原さん。

約20年の経験がある相原さんはこう語気を強める。「列車を遅らせることなく、確実に商品を積み込む。そこに私たちのプライドがあります」

 「お客様の要求に応えて商品を安定して運ぶ。時刻通り列車に商品を積み込む。こうした基礎となる力が現場にあるからこそ、マッハ便のような新しい仕事を生むことができたのです」

 地上と地下を1日に何度も台車を押して往復する毎日にも、創意工夫があり、人とのコミュニケーションが日々の仕事の活力となる。

トラックの後方、「テールゲートリフト」と呼ばれる白い昇降台を下降させ、台車を降ろしていく。見慣れたお弁当やおにぎりが次々と到着してくる

 ある日、湊さんは作業中に、2人の男女が新幹線の窓越しにお互いの顔を見ながらスマホに文字を打ち込んでいる光景に出くわした。声を出す代わりにSNSで会話をしているのだ。「何を話しているのかな」、そんな疑問も頭をよぎったが、湊さんは再び台車を押した。台車に載せられた商品を乗客が待っているからだ。新幹線は荷物も、人の想いも運んでいる。

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Wedge 2025年2月号より
災害大国を生きる 積み残された日本の宿題
災害大国を生きる 積み残された日本の宿題

「こういう運命だったと思うしかない」輪島市町野町に住んでいた小池宏さん(70歳)は小誌の取材にこう答えた。1月の地震で自宅は全壊。9月の豪雨災害時は自宅周辺一帯が湖のようになったという。能登半島地震から1年。現地では今もなお、土砂崩れによって山肌が見えたままの箇所があったほか、瓦礫で塞がれた道路や倒壊した家屋も多数残っていた。日本は今年で発災から30年を迎える阪神・淡路大震災や東日本大震災など、これまで幾多の自然災害を経験し、様々な教訓を得てきた。にもかかわらず、被災地では「繰り返される光景」がある。能登の現在地を記録するとともに、本格的な人口減少時代を迎える中、災害大国・日本の震災復興に必要な視点、改善すべき方向性を提示したい。


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