能登半島地震の発生から13カ月が経過しようとしている。261人の災害関連死を含む489人(2024年12月24日時点)の尊い命が奪われた。まずはこの場をおかりして、謹んで犠牲者の方々のご冥福をお祈りしたい。
今回は、能登半島地震が物流・貨物流動に与えた影響につき、震源地である能登地域を含む石川県に焦点を当てて、考察を試みたいと思う。
本来、このような災害関連の調査・分析は、被災者の方々に寄り添いつつ、個々の被害の内側からミクロ的なアプローチで行うべきなのかも知れないが、今回については、あえて外側からのマクロ的アプローチで臨み、能登半島地震が石川県の貨物流動に与えた影響と爪痕の全体像をでき得る限り客観的に解明していきたいと考えており、読者の方々にはご了解頂ければ幸いである。
県内完結の貨物流動と加賀と能登に分かれる産業構造
能登半島地震が石川県に与えた影響を分析するに当たって、まずは石川県の貨物流動と産業構造を把握しておきたいと思う。
最初に、下の表1.をご覧いただきたい。
トン数ベースで見ると、石川県内から出荷された貨物量の70%以上、石川県内で荷受けされた貨物量の60%近くが県内で完結している貨物流動なのである。石川県の貨物流動が県内の荷動き中心になっているか理由を一言で語ることは難しいが、この傾向も含めて石川県の貨物流動をさらに突っ込んで理解するために、産業構造を解明しておきたい。
この表2.は、石川県をかほく市以南の金沢市や小松市を含む加賀地域と宝達清水町以北の七尾市や輪島市を含む能登地域に分けて、全産業の事業所数、同従業者数、卸売業・小売業の年間商品販売額、工業製造品の出荷額を市町別に集計したものである。
全産業の事業所数・従業者数、卸売業・小売業の年間商品販売額、工業製品の出荷額のすべてにわたって、加賀地域が圧倒的なシェアを有している。特に、年間商品販売額については、加賀地域が90%以上、金沢市単独でも65%以上のシェアを示していることには注目すべきであろう。
この事実を踏まえると、石川県の産業構造の本質は、金沢市を中心とする加賀地域の工場で生産された工業製品が加賀地域で販売・消費されている地産地消型経済にあると考えられる。
しかしながら、目を石川県の農林漁業に向けると、異なる構図が見えてくる。
石川県を加賀地域と能登地域に分けて農林漁業の事業所数・従業者数、農業産出額、動力漁船数を市町別に集計すると、表2.で示した数値とは打って変わり、事業所数・従業者数および農業算出額については加賀地域と能登地域のシェアが拮抗しており、動力漁船数については能登地域のシェアが80%以上と加賀地域を圧倒している。
農林漁業に関する限り、加賀地域中心の地産地消経済ではない加賀地域と能登地域の二元構造となっており、漁業については輪島市・七尾市・能登町・珠洲市・志賀町等の能登地域が圧倒的なシェアを有している。
石川県の人口分布は加賀地域がおよそ85%、能登地域が15%となっており、多くの農林水産物が、このシェアにもとづいて生鮮食料品として配分されていると考えて良いであろう。