復興後はどのような貨物流動になるか
ここで、石川県の24年の貨物流動を示す補強情報として、NX総合研究所の「企業物流短期動向調査」をご紹介しておきたい。同調査は1988年10月以降四半期に1回の頻度で、足もとの出荷状況等を各企業(事業所)の物流担当者が直接回答しているDI = Diffusion Index調査である。
具体的には、出荷動向や運賃・料金の動向等6つの調査項目につき、当期実績見込みと次期見通しを対前年同期と比較して、「増加する」、「横ばい」、「減少する」もしくは「値上り」、「変わらない」、「値下り」等の3つの選択肢の中から選択している。
回収した回答については、調査項目ごとに各選択肢の回答事業所数を集計し、その合計事業所数に対する割合を算出した上で、「増加する(値上り)」と回答した事業所割合」から「「減少する(値下り)」と回答した事業所割合」を減じた数値を、「荷動き指数」や「運賃指数」といった動向判断指標として発表している。
下の図3.は、22年12月から直近の24年12月までの実績見込みと見通し別に、日本全国と石川県の荷動き指数を示したものである。
石川県の回答数は、日本全国の回答の数十分の一程度なので、荷動き指数の振幅が大きくなる傾向は否めないものの、グラフが示す通り、24年3月以降の石川県の荷動き指数が、日本全国比べ低くなっている。
最後に、下の図4.をご覧頂きたい。
このグラフは、石川県内各市町に届け出られた住民票に基づき、転入者数から転出者数を減じた社会動態増減数の23年1月から24年12月までの推移を、加賀地域と能登地域に分けて示したものである。
ご覧の通り、24年の加賀地域の人口が、上下動はあるものの増加傾向にあるのに対して、24年の能登地域の人口が、押し並べて減少傾向にあり、石川県の人口が能登地域から加賀地域にシフトしていることがうかがえる。実際には、一時避難者を含む住民票の届出を伴わない、一桁多い人口移動が発生している可能性が大きいと考えるべきであろう。
能登地域の復旧・復興は中長期的に進捗することが予想され、その間に能登地域から加賀地域への一時避難者が恒久的移住者に変わってしまった場合、表2.で示した加賀地域と能登地域の較差がさらに拡大し、それが爪痕として石川県の産業構造を、延いては石川県の貨物流動を大きく変化させてしまう可能性が、否定できないのではなかろうか。
筆者は、この能登半島地震が石川県の産業構造や貨物流動に与えた影響を調査・分析することは、近い将来に発生するとされる南海トラフ地震や首都直下型地震の影響を見ることにつながると考えている。今後の復旧・復興を祈念しつつ、引き続き実態と進捗を注視して行きたいと思う。