2025年2月7日(金)

「最後の暗黒大陸」物流の〝今〟

2025年1月31日

 また、石川県の農林水産物の一部は、加工食品の原料として食品工場に納入されていると考えられる。

 表4.は、これまでに示してきた二つの表と同様に、石川県を加賀地域と能登地域に分けて、食品工業の事業所数・従業者数・出荷額を市町別に集計したものであるが、上述の加賀地域・能登地域の人口分布を反映するように、食品工業の大部分が加賀地域に立地していることが分かる。

 すなわち、石川県の物流においては、「①主として加賀地域で生産された工業製品が加賀地域に配送される貨物流動」、「②加賀地域と能登地域の両方で収穫された農林産物が加賀地域に配送される貨物流動」、「③能登地域で水揚げされた水産物が生鮮と加工食品原料の両方として加賀地域に配送される貨物流動」という、大きく三つの貨物流動がメインストリームとなっていると考えられるのだ。

能登半島地震が石川県の産業に与えた被害

 次に、能登半島地震で石川県の産業が如何なる被害を受けたのか、振り返ってみたい。

 表5.は、能登半島地震発生の直後の2024年1月3日から11月末までの農業関連施設で確認された被害を、時系列的にまとめたものである。

 残念ながら、被害の程度、被害が発生した市町、復旧の状況等についてはまとまった公表は行われていないので、全体としての被害規模を把握することは困難である。しかし、農業用ハウス・機械・果樹棚等の被害件数、農地の被害個所数、農業用施設等の被害個所数がそれぞれ4桁に及んでおり、被害が甚大であったことは、間違いない。

 次に下の表6.は、同年1月6日から11月26日までに転覆・沈没、座礁、一部損壊、流出が確認された漁船の隻数を、時系列的にまとめたものである。

 それぞれの数字に“以上”という注釈が付され、農業と同様に復旧の状況が公表されておらず、数値の正確性については、些か疑問があることは否めない。しかし、先の表3.が示す18年(平成30年)時点の動力漁船数が石川県全体で679隻であることに鑑みれば、例えば11月26日に確認された転覆・沈没が52隻以上、座礁が68隻以上、一部損壊が176隻以上、流出が44隻以上、被害を受けた漁船の合計が340隻以上という数字が如何に大きいかわかるだろう。

 表7.は、石川県の加工食品工場の被害状況を、加工食品の種類、工場が立地する市町ごとにまとめたものである。

 表5.および6.と同様に、復旧状況については公表されてはいないが、石川県内で収穫された農水産物を原料としている工場も多いと推察され、加賀地域・能登地域共に、食品産業が甚大な被害を受けたことがうかがえる。


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