前々回の「【日本物流における内航海運の位置づけ】2024年問題の解決へどれだけ寄与するか、データで徹底検証」で、筆者はトラック輸送から内航海運へのモーダルシフトが「2024年問題」の解決にどれだけ寄与するかをデータで検証した。それを踏まえて前回「【日本の高速道路は物流に不向き?】物流「2024年問題」に内航海運へのモーダルシフトが必要な理由」で、日本の内航海運事業が中長期的に進むべき方向性について述べた。
そこで今回と次回の2回にわたって、トラック輸送からのモーダルシフトのもう一方の担い手として想定されている鉄道輸送について述べたい。
まず今回は、日本の物流における鉄道貨物輸送、特にコンテナ輸送の実態を、できるかぎり数字で捉えて述べていく。
鉄道コンテナ総貨物量の約9割を占めるJR貨物
鉄道貨物輸送は、石油・化学薬品・セメント・石炭など貨物に合わせた専用貨車1両単位で貸し切って直接積載する「車扱(しゃあつかい)輸送」と、貨物を荷送人の戸前でコンテナに入れてトラックが発側貨物駅まで、同駅から着側貨物駅までを鉄道が担い、荷受人戸前までの配達をトラックで行う「コンテナ輸送」に分けられる。
かつて日本の鉄道輸送では車扱がほとんどを占めていたが、貨物の主流が石油・化学薬品・セメント・石炭などのバルク貨物からコンテナ化に適した通常の工業製品に移行したことなどにより、近年では下図が示す通りコンテナ輸送が半分以上を占めている。
トラック輸送からのモーダルシフトの受け皿として想定されているのが、このコンテナ輸送である。下図が示す通り、その幹線輸送の約90パーセントのシェアを握っているのが、日本貨物鉄道(以降、JR貨物)である。
上図で読み取れる通り、約90パーセントのシェアを有するJR貨物以外の鉄道会社は、「○○臨海鉄道」という社名の輸送範囲が限られた会社である。トラック輸送から鉄道輸送へのモーダルシフトに当たっても、その幹線輸送は専らJR貨物が担うことになると言って良いであろう。
そこで、以下に若干紙面を割いて、実はあまり知られていないJR貨物のコンテナ輸送の実態を、ご紹介していきたい。